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わが家の記録−ハンメが孫娘に語る「半生記」

 正月休みを利用して田舎で暮らす母方の祖母の所へ行ってきた。テレビで宣伝されていた「パパ、写真撮ってぇ〜、ビデオ撮ってぇ〜」の最新式ビデオカメラを購入して。

 今年84歳になる祖母は、介助なしの歩行が困難ではあるものの口は依然として達者である。カメラを向けて「撮ってあげる」という孫娘の前で、写真を撮られるかのようにすましている。「しゃべって、動いて」と頼んでも、祖母は「何をだ?」とすまし顔。そして、数分後、祖母の半生記の語りが始まった。

 幼い頃、18歳で嫁いだ長姉が夫の浮気を苦に服毒自殺をした話、書堂(寺小屋)で教鞭をとっていた長兄に文字を習い、「沈清伝」を暗唱して村の女性たちの前で語り褒美をもらった自慢話など話は尽きない。

 1時間テープを優に撮り終えて再生すると「わしは日本語と朝鮮語を混ぜこぜに使ってるだなぁ…」と一言。朝鮮で23年、日本で60年以上も暮らしてきたのだからそうもなろう。

 家族の前で「上映会」を開くと笑いが沸き起こった。祖母の話は思いつくまま行ったり来たり、言葉はへんてこな日本語と朝鮮語の方言が混ざって、何とも言えない「味」を出しているからウケてしまうのだ。

 取材先で知り合った在日1世の李玉禮さんは、日本で生まれ育つ若者たちに「1世のホンマもんを伝えたい」と話していた。さびしいかな人の命は時間の流れに逆らえない。数奇な運命をたどってきた1世を知る者たちが、次世代のために在日の「歴史」を記すのは責務なのかもしれない。(潤)

[朝鮮新報 2004.2.2]