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春・夏・秋・冬

 狂言師の野村万之丞さんが亡くなった。享年44歳。あまりにも若い死に驚きを禁じえない

▼昨年4月、訪朝した野村さんに平壌でインタビューした。現代の民族芸術に関する美学討論会に参加し、聖徳太子の時代の仮面劇、伎楽についてビデオ映像も交え熱心に講演していた。休憩時間の合間を縫ってのインタビュー、しかも初対面。にもかかわらず、気さくに話に応じてくださった

▼伎楽は今から1500年ほど前、百済から来た味摩之によって伝えられたと言われる。シルクロードを通ってやってきた伎楽。野村さんはその逆をたどり21世紀のシルクロードを創るべく、「マスクロードプロジェクト」を立ち上げた。伎楽を現代風にアレンジしたものを、東京からスタートさせ、奈良、太宰府を経て海を渡り、朝鮮半島、中国、インド、チベット、イラン、イラクを回って欧州にたどりつくまで演じていこうというもの。その一環として今年4月には平壌でも公演した

▼野村さんの話で印象深かったのは、「文化を共有したい」ということ。それが相手を知り自分を知ることにもつながる、自分を知ってもらいたいから相手をもっとよく知ろうとする。だからこそ、自分の家でぶつぶつ言うのではなく、「おじゃまします」と相手の家を訪ねればいい、一緒にご飯を食べて飲んで話せば互いに理解し合えると力説していた

▼そんな思いを胸に昨年と今年、2度にわたって訪朝し文化交流を果たした野村さん。朝・日関係に明るい兆しが見え始めてきただけに、無念で仕方がない。(聖) 

[朝鮮新報 2004.6.15]