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春・夏・秋・冬

 手塚治虫の作品のなかで印象に残っているもののひとつが「アドルフに告ぐ」という作品だ。第二次世界大戦当時の日本とドイツを舞台に、アドルフという名前をもつ3人の男がたどった運命を描いた長編マンガである。パレスチナ問題が取り上げられるたびに、この漫画のことを思い出す

▼17日、イスラエルの攻撃により、パレスチナのハマス指導者ランティシ氏が殺害された。3月22日にハマスの指導者であったヤシン師が殺害されたばかりである。イスラエルのシャロン首相は、ハマス指導者に対する暗殺を今後も続けると公言している。何と恐ろしくごう慢な態度であろうか

▼イスラエルの蛮行に世界から批難が集中している。20日付の朝鮮中央通信も次のように論評している。「イスラエルの殺人蛮行は、綿密に計画された国家テロ行為として到底許されない。…諸般の事実は、米国が提唱している『対テロ』戦がかえってテロの悪循環だけを招き、イスラエルこそ米国と共にテロの真犯人であることをはっきり実証している」

▼ナチスドイツに大量虐殺されたユダヤ人たち。そのユダヤ人たちが今度はナチスと同じような虐殺行為をパレスチナ人に対し行っている

▼「アドルフに告ぐ」は、親友として育った2人のアドルフがパレスチナの地で殺しあう場面で終わる。手塚治虫は、歴史のなかで翻ろうされる個人の運命を通して、憎しみの連鎖がもたらす悲劇を描いている。しかし、「憎しみの連鎖」という言葉であいまいにしてはいけない。憎しみを作りつづけている側が誰なのかは明確だ。(徹)

[朝鮮新報 2004.4.24]