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若きアーティストたち(27)

画家・河専南さん

 東京都渋谷区のギャラリーで、在日と日本の若手アーティストたちによるグループ展「成分表示」が開かれたのは昨年6月のことだった。タイトルには、社会生活の中で見えにくい存在である国籍や身分証明などの管理データを、食品の成分表示ラベルに置き換えて視覚化するといった意図が込められていた。

 中でも河専南さんの「ワタシトイウ『モノ』」は衝撃的な作品だった。正面を鋭い眼差しで見つめる女性の顔を、3つに割って作られた作品には、そのひとつひとつに「JAPAN 1974.4.5」「NORTH KOREA 1981.4.5」「SOUTH KOREA 2000.6」と示されており、強烈なインパクトを与えていた。おそらく日付は、作者の誕生日、朝鮮学校の入学、北南首脳の歴史的出会いと共同宣言発表の日付であろう。

 河さんは作品を通して「在日へのこだわり」を追求し、表現している作家である。

 「こだわらずにはいられない何かがある。分断された祖国、日本人ではない、という強い思い。でも、私の中に日本的なものがどれほど多いか…」

 民族教育を受け、朝鮮学校で美術の講師をしている河さんは、これまで自分の内側に存在する「日本的なもの」を否定し、「民族的」であることにこだわりをもってきた。半世紀以上も続く祖国の分断は、在日3世である彼女の胸にも「ヒビ」を作り、「北のものも、南のものも、『私のもの』として消化させたい。そして、日本で育った必然性さえも、素直に『私(在日3世)のもの』として肯定できれば…」との思いを抱かせている。作品は、そうした彼女の複雑な内面世界を表している。

 朝鮮学校では日常的に朝鮮語が使用されているが、好きな芸能人やテレビの話は、どうしても日本語が出てしまう。そうしたストレスを河さんは心配する。

 日本の朝鮮に対するバッシングの影響もあり、この複雑な環境の中でいかに民族観を子どもたちの心に育むかというテーマを常に考えていきたいと思っている。

 「子どもたちにとって学校は、友達と交わる大切な場。幼い身で朝鮮語を学び身につける負担もあるけれど、民族教育を受けたことによって得られるメリットや魅力は計り知れないと思う」

 最近では美術活動を通じて南朝鮮のアーティストたちとの交流も深めている。そんな時、「朝鮮学校に通って本当に良かった」と実感する。

 初級部から中級部までの美術の授業を受け持ちながら、生徒ひとり1人の個性を尊重し、感性を引き出しながら、創造性に加えて民族性を与えられたら素晴らしいと考える。「自然に民族の文化に触れることができない日本だからこそ、美術の授業を通して民族的な感性を育てて行きたい」との思いは強い。

 夢は、世界に通じるアーティストになること。教員だった頃は、学校での仕事が夜11時に終わった後、12時から夜中の2時、3時まで創作活動に励んでいた。教育も、創作活動も120%が彼女の姿勢。「ようするに欲張りなんです。今は講師になったので、もっとがんばらなくては」と熱く語る。小さな体にみなぎるパワーはまだまだ限界には達していないようだ。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2004.12.14]