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若きアーティストたち(24)

司会者・金真実さん

 日本人カップル159組、 在日コリアンカップル184組、在日コリアンと「韓国人」のカップル12組、在日コリアンと日本人のカップル19組、「韓国人」と日本人のカップル6組…。今年7月までの金真実さん(38)の司会実績である。

 金さんは、自身の結婚式を機にブライダルの道へと進んだ。「華やかな結婚披露宴の舞台裏で心を尽くす人たちに感動した。と同時に、男の人たちによって決められた結婚披露宴に疑問を感じた。打ち合わせも無く、4時間半の披露宴だった」。

 当時の結婚式に対して金さんは、多くの場合同胞女性は「受身」であったと考える。

 「新婦は式の最中、顔を上げてはいけない、笑ってもいけない、と式を挙げる前から言われていた。冠婚葬祭に女性が口を挟むのはいけないことととらえられていた。家族、親族、自分を支えてくれた人々、これからの人生に対して、結婚披露宴は大切なセレモニーである」

 花嫁の力になってあげられれば―。そんな思いから金さんは打ち合わせに多くの力を注ぐ。「新郎、新婦、両家がどのような式を望んでいるか、その想いをどう生かすかが重要。押し付けは禁物」。朝鮮の風習を取り入れつつも2人らしさを感じさせる心のこもった演出を心がける。

 司会を始めて10年以上経つが「女性の司会」は最初、同胞社会では受け入れられなかった。「女だから駄目」との悔しさをバネに、「女性だからできる」魅力ある式作りに精を出した。マリアージュ・グランデの司会者として数多くの披露宴を手掛けながらいくつかの同胞結婚式を受け持つようになり、次第に同胞たちからも「女性の司会も良いなぁ」との反応が見えるようになった。

 仕事中、特に気を遣っているのは言葉使い。「ただ単に『結婚します』『百年佳約』と判を押したように言いたくない。言葉ひとつで人は笑いもするし、泣きもする。それほど言葉の力はすごいもの。2人にぴったりな『言葉』、日本語が持つ情感と朝鮮語の情感は微妙に違う。2人に合った『言葉』を探したい」。

 現在は京都、神戸、大阪、奈良、滋賀、名古屋、三重、岡山、岐阜…と各地で朝鮮語と日本語の同時進行による披露宴の司会をつとめている。

 今年からは週2回、近所の主婦たちを対象に朝鮮語の勉強会をはじめるようになった。

 「私の言葉を聞いて、それはソウル語か、平壌語かとたずねる人がいる。私は平壌でも、ソウルでも暮らしたことはない。だけど、朝鮮語を話せる環境を大切にしたい。講師と向き合うことによって受講生が朝鮮語を使うなら、これも立派な環境作り」。

 金さんは得意な話術を生かして朝鮮学校児童たちへの読み聞かせも行っている。

 「朝大・文学部の卒業生として、自分の力を生かしたい。両親にはとても感謝している。そして、妻、母、嫁、司会者としての私を理解し支えてくれる家族に感謝している。在日という特殊な存在だからこそ、民族の誇りを伝え続けていきたい」(金潤順記者)

[朝鮮新報 2004.8.4]