髪に
触れないで
椿油が
衣についてしまうわ
唇に
触れないで
口紅が
溶けて流れてしまうわ
リ・オク(1760〜1812)
号は文無子(ムンムジャ)。しばしば、女性と間違われて紹介されている漢詩集を目にするが、れっきとした男性。男女の愛の詩を多く残す。女性の視点から詠われているものが多い。それも、男性の愛欲の対象でしかない女性像ではなく、男性と同じ人格を持つ、ひとりの人としての感情や意地を前面に押し出した女性像である。既存の漢詩の「倫理」や「道徳」を軽々と飛び越えた、新しい女性像である。生涯、出世とは縁がなく貧しい暮らしだったというが、そのような生活の中から、名もない市井の人々の、特に事実「名」を持たなかった女性達の姿を生き生きと活写した、稀有な文人である。(朴c愛、朝鮮大学校非常勤講師) [朝鮮新報
2004.6.22]
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