失くしてしまいました
なにをどこで失くしたのか分からず
両手でポケットをまさぐりながら
道へ出て行きます 石と石と石が果てしなく連なり
道は石垣に沿って延びています 垣は鉄の扉を固く閉ざし
道の上に長い影を落として 道は明け方から夕暮れへ
夕暮れから明け方へと通じています 石垣を手探りしては溢れる涙
見上げれば 空は気恥ずかしいほど蒼いのです 草一本ないこの道を歩いて行くのは
石垣の向こうにわたしが残っているからで わたしが生きているのは、ただ
失くしたものを探しているだけなのです 1941年9月31日
尹東柱(ユン・ドンジュ、1917―1945) 「失くしたもの」を探し続けて生きた詩人は、祖国解放を目前にした1945年の2月、福岡刑務所で獄死した。(日付は原文のまま)(選訳、康明淑) [朝鮮新報
2004.2.11]
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