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「祐天寺シンポ」アピール文(全文)

 私たちは、祐天寺に残されているご遺骨の中で、60年の歳月を経てはじめて遺族の判明した、旧日本軍に徴用され、戦死・戦病死された金正表さんのご遺族金勇虎さんと金龍均さんのご遺族金元鏡さん、浮島丸爆沈事件での犠牲者遺族代表の全承烈さんをお迎えし、追悼会および戦争と平和を考えるシンポジウムを企画し行いました。

 しかし、日本政府は朝鮮民主主義人民共和国のご遺族、金元鏡・金勇虎さんに対する付き添い、通訳者などの入国を一切認めようとはしませんでした。お年を召され、朝鮮語しかわからず、国を一度も離れたことのないお二人の方が単独で、なんで複雑な手続きを要する中第3国を経て日本にそしてこの場に来ることができましょうか。

 60年前に日本軍に徴用され、その後遺骨がどこにあるのか連絡もないまま過ごされたご家族や、日本政府の名簿が公開されない中、私たち日本在住のボランティアや「朝鮮日本軍『慰安婦』および強制連行被害者補償対策委員会」のご努力でようやく探し当てられたご遺族の方々は、肉親の悲しい知らせに接し、新たな苦しみで激しく心が動揺したに違いありません。

 しかし、それらを乗り越え、家族の万感の思いを背負って故郷を出、ご遺骨と対面しようと決意されたご遺族の、それが断たれた時のお気持ちを考えると私たちの心もまた切り裂かれる思いです。これは日本政府が、家族への新たな苦しみを押し付けたものだといえるでしょう。私たちは、今なしえるご遺族への最小限の償いも放棄した日本政府への憤りを禁じることはできません。

 ご遺族の悲しみや苦しみは過去に日本帝国主義の引き起こした侵略戦争と植民地支配に根源があります。戦争はすべてを破壊し、憎しみを増大し、人権を否定し、すべての人間の誇りと尊厳をも打ち砕くものです。追悼会・シンポジウムの中で、私たちは、戦争を否定し、これからもアジアとりわけ朝鮮半島と日本の平和を追求していく決意を固めました。

 祐天寺に残され、今も家族の元に帰れないご遺骨の無念の叫び声が聞こえます。遺骨は本人と遺族のものです。遺骨には人間としての尊厳や人格もあります。そして、これらの人たちと遺族、故郷との間には、いまだに深く暗い海が横たわっていることもわかりました。しかし、私たちはこの海を友好と連帯で埋めることは不可能ではないと信じています。私たちはこれからもその努力を続けていきます。

 同時に、日本政府は過去の過ちを認め、謝罪し、清算する必要があります。そのことが、日本が国際社会とりわけアジアの国や地域、人々に信頼され名誉ある地位を占めることへの第一歩です。

 追悼会では、全承烈さんは60年を越え初めて父の遺骨を抱きしめられました。また、本日のシンポジウムで多くの研究者、関係者の方から貴重な意見が述べられました。そして、未来に向けて平和を作り上げるために過去を正視し清算しよう、お互いの連帯を深めようという決意が国や民族を超え参加者一同で固められました。しかし、今回の私たちの集まりはそのほんの糸口を紡ぎだしたに過ぎません。厳しい状況の中でもさらに運動を進めましょう。そして、できるだけ早く南北朝鮮のご遺族をご一緒に迎えましょう。

[朝鮮新報 2004.12.16]