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祐天寺シンポでの報告 「遺骨問題は今、日本は何をすべきか」

 北部朝鮮出身者の元日本軍人、軍属の遺骨がどのような差別的扱いを受けてきたかについて報告したい。

 厚生省が公表した朝鮮人の元軍人、軍属の総数は24万2341人で、このうち戦傷病死者は2万1909人とされている。だが、1953年に発表された厚生省第二復員局の調査によると36万4186人、うち死亡、行方不明が1万6363人とされ、正確な被害者数はいまだ定かでない。

朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会代表 元参議院議員 清水澄子さん

 日本政府が戦没者の遺骨収集を本格的に開始したのは1952年、衆議院において「海外地域等に残存する戦没者遺骨の収集及び送還等に関する決議」が採択されてからとなっている。

 しかし、手元にある公文書によれば、すでに47年2月26日付けの連合軍司令部の指令によって、「朝鮮人遺骨遺留品のうち、その送還は南朝鮮に在住している者の分だけを送る」となっており、48年2月と5月に7200体の遺骨を南朝鮮の政府機関に送ったと記録されている。3回目の送還の時に連合軍司令部の中止指示が出されたために、福岡県と呉市に2300体を保管したとある。

 以上のことから明らかなように、@遺骨収集は戦後すぐから実施されていた、A連合軍は南北分断以前から北部朝鮮在住者の遺骨の送還を差別的に扱うことを指示していた、B福岡県と呉市に保管された遺骨の一部が韓国に送還され、58年に2326柱が厚生省に移管され、71年に祐天寺に預託された。

 厚生省は60年2月に遺骨の取扱いについて外務省東北アジア局に問い合わせた。その資料によると、@南朝鮮の遺骨について韓国代表部に送還したいと要求しているが応答がない、A朝鮮総連から北部朝鮮出身の遺骨返還の要請があったが、「北朝鮮出身の遺骨には葬祭費を支払わない方針」だった。

北出身者を差別

 韓国への送還は、48年から98年にかけて行われた。朝鮮半島出身の旧軍人、軍属の名簿については、91年3月に9万804人、92年12月に1万7000人、93年10月には旧陸軍軍人、軍属の名簿509冊、海軍の軍歴原票26巻(マイクロフィルム)を韓国政府に引き渡した。この名簿の中には当然、北部朝鮮出身者が含まれている。

 また、57年3月26日の厚生省文書によると、朝鮮総連が「朝鮮人戦没者数の算定の根拠と、その遺骨について」質問したことに対して、答弁書で「各人の死亡時期、場所、死亡事由などは、それぞれの所属の各部隊の名簿に記録されているので、部隊名簿によって朝鮮人戦没者数は容易に集計できる」と答えている。

 もっとも正確なリストの掌握が軍であり、政府である。そのリストが政治的意図によって、南北朝鮮の家族や政府機関に速やかに手渡されず、公表されなかったために、多くの遺族が苦痛と困難を強いられた。

 このように、日本政府の「遺骨」と「名簿」に対する不誠実な対応が、多くの犠牲者とその遺族に対して数知れない被害を加算してきた。このことを、政府に改めて抗議し反省を求めなければならない。

「60周年」も、問題山積み

 以上で話した「遺骨問題」には、戦争犯罪者として処刑された朝鮮人や日本軍「慰安婦」、強制連行や浮島丸事件の被害者は含まれていない。朝鮮籍の元軍人、軍属者への未払い賃金などが供託されていたことも発見された。東京法務局への供託金を台湾人への返還時に適用した物価スライド率(120倍)で換算すると、109億6368万円になるという。このように、朝鮮半島関係の戦争による被害者の補償問題は、いまだに多くの問題を残している。

 日本は来年、敗戦60周年を迎える。日本人戦没者の遺骨収集事業と追悼行事、遺族への援護は52年から延々と行われている。2005年予算(概算要求時点)は遺骨収集だけで2億3000万円が計上され、遺骨のDNA鑑定、慰霊巡拝、慰霊碑建立、補修など、関連予算は5億円を超えている。さらには、「戦後60周年関係事業」の予算は579億円となっている。朝鮮を含めたアジアの国々と多くの人々に被害を与えてきた日本が自国民中心主義で「戦後60周年」を迎えることを危惧している。私たちが、本籍も遺骨名もわからないためにいまだ故郷に帰れず祐天寺に彷徨する霊を、一日も早く遺族のもとに届けたいと努力していることをまったく無視している。

 日本政府はすみやかに、未解決のままの朝鮮半島出身者の旧日本軍人、軍属の遺骨の収集と故郷への送還はもちろんのこと、強制連行の犠牲者をはじめ、すべての植民地支配と戦争の犠牲者に対して手厚い礼を尽くすべきだ。それなくして、現在計画しているような「60周年」行事を挙行するならば、それは韓国と朝鮮の全人民に対する侮辱であり、「第二の植民地支配」と言わなければならない。

返還義務果たすように

 最後に今後の取り組みだが、韓国で「強制動員被害者真相究明委員会」が発足し、調査活動がはじまったことに対応して、日本でも強制連行真相調査団を中心に市民レベルの「調査委員会」を作り、とりわけ、「遺骨返還運動」を国民的な課題とすることが重要だ。

 遺骨は人格的性格を持ち、その死者に対する敬愛の情と癒し、そして、関係の修復と許しを請う人としてのまつりごととしておろそかにすることのできない営みだ。

 加害国日本の政府は遺骨返還の義務がある。私たちは、日本政府にその義務を果たすよう要求しよう。そして、国と自治体および企業、寺院などの調査を急がせる必要がある。とくに、私たち日本と南北朝鮮の民衆が、過去の歴史を教訓にして「敗戦60周年、朝鮮の解放60周年」の新たな連帯運動を構築し、日朝平壌宣言の履行と日朝正常化の実現と、南北の統一促進の力を作り出していくことを提起して報告を終わる。

[朝鮮新報 2004.12.16]