13日東京で、国際シンポジウム「子どもの本は世界をむすぶ〜日本・韓国・朝鮮」開催 |
子どもの本を通して国際的な理解を深めようと13日、東京都品川区のゲートシティホールで、JBBY創立30周年記念国際シンポジウム「子どもの本は世界をむすぶ〜日本・韓国・朝鮮」が開かれた(14日に大阪府立中央図書館でも開催)。 JBBY(社団法人日本国際児童図書評議会=Japanese Board on Books for Young People)は1974年の設立以来、国際児童図書評議会(IBBY)の日本における窓口として、国内外でさまざまな活動をおこなっている。 会場入り口には絵本を中心に、日本と朝鮮半島の子どもの本が展示され、訪れた参加者らは手にとって本を眺めていた。本は、各地域の子どもたちがよく読んでいるもの、民族的な伝統や現在の暮らしを描いたもの、日→朝、朝→日に翻訳出版されたものなど約50冊が展示された。 亀田邦子会長(前国立国会図書館国際子ども図書館長)は、「子どもたちが本を通じて隣の国、人、文化を知ることはとても大切。子どもの本が平和な世界、新しいアジアの関係をつくるよいきっかけになれば」と挨拶した。 シンポジウムにはパネリストとして、康禹鉉(KBBY会長、イラストレーター)、宋永淑(ソウル読書教育研究会会長)、申敬淑(児童書出版社代表)、神谷丹路(翻訳者、社会学者)、李慶子(在日作家)さんが出演、児童文学者の松居直さんがコーディネーターをつとめた。 「日本」を拒む 康さんは、80年代以降の南朝鮮児童図書のあゆみについて語った。「88年に開かれた初の『韓国国際絵本原画展』を契機に絵本運動が盛んになった。95年にはKBBY(韓国国際児童図書評議会)が設立され、ドラマ『冬のソナタ』のロケ地でおなじみの南怡島を子どもの文化のふるさとにするための取り組みも行われている」。 申さんは、KBBYの設立に貢献した人物。南朝鮮で初の子どもの本専門書店「チョバン」を設立した。 「今回JBBYに贈呈するため50冊の絵本を選んだが、日本から輸入した絵本が多い一方、日本的なにおいの強い絵本はあまりないことに気がついた。子どもの本を通じて共通点を見つけ、お互い理解するきっかけは多くても、独特の文化を受け入れる機会はずっと少ないのが現実だ。国内でそういう絵本が出版されない理由は、商業的な理由、あるいは国家間の問題が国民感情の中に残っているからだと思う。国と国とができないことを、人と人とはできると信じる」と話した。 「在日」の痛み 李さんは自身の体験から、在日の子どもたちが置かれている状況と作品、朝鮮の児童文学出版事情について語った。「民族学級の講師をしながら、在日の子どもたちが抱えているたくさんの『なぜ?』に答える教材が必要だと思った。日本で出版されている、朝鮮(韓国)について描かれた子どもの本は全体の5%位。中でも在日の子どもの怒り、悲しみ、2つの名前を使う痛みなどを表した作品は少ない。隣の国を知ることと同じく、すぐ隣にいる『在日』の子どもの悩みや何に向かって生きているのかを知ることも大切。それは日本だけではなく、本国にも言えること」と語った。 神谷さんは、「日本人としてアジアの人々と接するとき、侵略の事実に対する認識なしに本当の意味での交流はない」と指摘。そして、「日本の子どもたちは高学年になると、『慰安婦』や『侵略』の事実に触れるが、そのことを理解する前提として、まず隣国の衣装や建築、人々の暮らし、楽しいお話といったすばらしい文化に触れることが望ましい。幼少期に絵本を通じて身につけた隣の国の人々に対する肯定的な支えがあってこそ、いずれ向き合う悲惨な出来事を受け止められる」と話した。 東京で開かれたシンポジウムには、都内を中心に約170人が参加した。(金潤順記者) [朝鮮新報 2004.11.24] |