横浜 医協第27回学術報告会開く、高齢化時代にふさわしい有能な介護スタッフの育成を |
在日本朝鮮人医学協会第27回学術報告会が11月14日(日)、神奈川県横浜市にあるパシフィコ横浜で開催された。報告会には東日本と西日本から集まった医協会員が約120人参加した。 報告会では李大国会長のあいさつ後、医科、歯科、看護、東医・柔整、介護分科の28のテーマで各分野での研究成果に基づき活発な討論が行われた。 介護分科新設
今回の報告会から新しく介護分科が設置され注目を浴びた。周知のように高齢社会の到来で介護問題がより重要視されるようになった。2000年から介護保険制がスタートしたが、介護問題は日本人高齢者だけではなく、そのまま在日朝鮮人高齢者の問題でもある。現在、在日同胞が数多く暮らす各地域では独自のデイサービスを展開するなど介護問題に取組む動きが顕著である。そのような現状を反映してか介護分科では他の分科よりも多い7題の演題が発表され議論が交わされた。 デイサービス・アリランの家(神奈川県川崎市)、京都エルファ、いこいのマダン(愛知)、介護老人保健施設ハーモニー共和(大阪)など、介護の現場から現状が報告されいくつかの問題提起があった。今日本では介護の時代にあったより良い制度や資源の整備をしている過程だが、在日同胞には介護を支える有能な人材が必要である。講演者の中からは一人でも多い在日のケアマネージャー(介護支援専門員)育成を訴える意見も出た。 現在、日本では2005年の介護保険制度の見直しが大詰めを迎えている。介護制度がどのように変わるのかを見極めることと同時に、それが在日同胞高齢者にどのように影響するかを正確に提示することがより重要である。在日同胞においても、日本定住化が進む中で、介護保険制度を研究し上手く利用することが利益につながることから、ケアマネージャーなどの介護スタッフの育成が急務であるとの指摘もあった。 学校保健の充実 報告会ではランチョンセミナーとして「高血圧について」、「ヒフ疾患の落とし穴について」、「急性肺障害と好中球エラスターゼ阻害薬による治療」が行われた。
つづいて行われた全体会では学校保健として「2003年度大阪府朝鮮学校保健統計報告」を共和病院・保健予防科の朴認洙氏が、「兵庫県朝鮮学校保健活動報告」を兵庫県朝鮮学校保健校医会看護部会の姜順姫さんが各々行った。 また、特別報告として個人レベルでの朝鮮への医療支援と交流について歯科医の高康浩さんが興味深い報告を披露した。 高さんは2002年6月から2004年5月までの約2年間にわたり平壌、沙里院、元山にある診療所などで行った医療支援について報告した。高さんが医療支援の前提条件として@医療の現場を訪問し意見交換後に必要な物資を援助する。A援助物資は直接、医療現場に伝達する。B物資の利用状況と効果について報告を受けることを原則として掲げた。高さんは共和国の経済状況は厳しいが、医療を必要としている患者が医療を受けるのは当たり前だとして、引き続き医療支援をしていくと述べた。 報告会ではシンポジウム「動脈硬化とメタボリック症候群」が行われた。総聯各県本部、朝大はじめ各地の朝鮮学校の協力の下に行われたアンケート調査(回答=830人)の結果報告をあさひ病院・金秀樹院長が行った。(詳報は12月に掲載) また、内科(しんクリニック理事長・辛浩基院長)、栄養学(共和病院栄養給食科・趙幸子さん、林民淑さん)、東医(ハーブ調剤薬局・金兌勝さん)の立場からそれぞれ意見を述べ、ストレス、運動不足など在日同胞も日本人同様、動脈硬化危険因子が重要な医療課題になっていると指摘した。 [朝鮮新報 2004.11.18] |