米軍再編の正体と危険性、米主導の世界制覇追及 |
敵国占領、政権交替を企図
ブッシュ政権によって進められている世界規模での米軍再編(先端兵器化、兵力削減、再編成および再配置)は、軍縮と平和のためのものではなく、米国単独主導による21世紀世界の完全制覇を軍事的に追求しようとするものである。 冷戦終結後、父ブッシュ政権は世界の期待とは裏腹に、「唯一超大国」として軍事力を背景に世界的版図で覇権を追求する「新世界秩序」構想を打ち出した。 そして、「ヨーロッパの米軍10万はイラクのような不安定要素に対応し、アジアの米軍10万は北朝鮮の脅威に対処」するという「2大正面同時対応戦略」を掲げ、その実現のために先端科学技術による圧倒的軍事力と、全世界に配置された米軍の再調整、再配置で従来の米軍事力を21世紀型の未来軍に転換する軍事変換(軍事技術革新=RMA)と、海外駐屯米軍の再配置(GPR)を2大軸とした。 現ブッシュ政権は、これを「9.11同時多発テロ」直後に発表した「2001年−4カ年国防検討」で、さらに攻撃的、侵略的な内容に転換させた。すなわち、2つの地域で敵を撃退できる軍事力を確保するだけでなく、「敵国の領土を占領し政権交替を可能にする軍事力が必要」だということだ。 これは敵国占領、政権交替までを企図する攻撃的な戦略であるばかりでなく、軍事力を迅速に移動させ戦場に投入することにより、早期に勝利をもたらす速戦即決戦略でもある。また敵が攻撃を仕掛けてこなくても、事前に封鎖し先制攻撃を加える攻撃的な予防戦争政策である。 「9.11」直後に作成された「国家安保戦略」で、ブッシュ政権は先制攻撃政策を正当化した。従来のように、重武装した米軍兵力を固定した地域に駐屯させ、「敵対勢力」をけん制、封鎖するのではなく、任意の時刻、任意の地域に兵力を迅速に投入し先制打撃を加え早期に勝利しようというものだ。 このようなブッシュ政権の先制攻撃政策は、昨年採択された「国防計画指針」の中の「1−4−2−1戦略」によってさらに深化された。 ここでいう「1」は米本土の防衛を意味し、「4」は北東アジア、東南アジア、中東と西南アジア、ヨーロッパの4地域に米軍を前進配置、同盟国と友邦国を引き入れ「敵対勢力」を打撃するということだ。 「2」は朝鮮半島と中東の2つの地域での戦争、紛争に迅速機動軍化した米軍を投入し制圧することを意味し、「1」は朝鮮半島に迅速機動軍を迅速投入し占領、政権交替を可能にする軍事能力、作戦態勢を意味する。つまり、朝鮮半島は常に「2」と「1」の対象地となっているのである。 今年に入ってからは10日以内に戦場に迅速機動軍を投入し、30日間で敵を撃破、その後の30日間で新たな戦闘準備を整えるという「10−30−30計画」を公表した(「プラウダ」、2004年4月4日付)。 一方、ブッシュ政権は量より質を求める方向で軍を改革し、冷戦時代の武力を最先端軍に衣替えする作業に本格的に取り組んでいる。 「ラムズフェルド・ドクトリン」と呼ばれるこの方針は、最先端科学技術に焦点を合わせながらも、ここに新たな戦争概念とそれに見合った軍事組織という3つの内容を結合し、軍事力と戦闘力を革新的に強化する方策だ。 米軍再編の重要な内容の一つとして、軍事力極大化のための合同化があげられる。つまり、陸、海、空、海兵の合同化と、正規軍と特殊軍およびCIA(中央情報局)との結合だ。ここで注目すべき問題は、核戦力を通常戦力の上位軍事力として区分していた従来の方針を放棄し、核戦力と通常戦力の統合的運用を追求している点だ。 対北攻撃と南での再配置 世界的な米軍再編で、ブッシュ政権が最も比重を置いているのが北東アジア地域である。北東アジアは、米国が21世紀の世界を完全制覇するための主戦線、要衝地帯となっている。すなわち、朝鮮に対する先制攻撃態勢の構築や中国、ロシアをけん制するうえで、北東アジアに対する影響力と統制を強化することがブッシュ政権の戦略的課題となっているのだ。 こうした試みからブッシュ政権は、今年に入り米軍の世界的再編の一環として南朝鮮での米軍削減と再配置計画を推進している。 ブッシュ政権は、軍事境界線一帯に駐屯する米第2師団兵力の中から、3600人をイラクへ派遣し、2008年末までに1万2500人を削減する。また、ソウルの龍山基地兵力と議政府、坡州、東豆川など軍事境界線一帯に配置された米第2師団兵力を漢江以南の平沢、烏山地域に移転させることと基地の縮小にも触れている。 その目的は、@米国が対北先制攻撃を始める場合、北からの強力な第1撃による被害を最小化し、侵攻作戦を開始、A軍事境界線一帯の警備、防衛を米軍の作戦指揮下にある南朝鮮軍に負担させ、自らの損失を最小限に抑え、B南朝鮮駐屯米軍と米軍基地の永久化、C「米軍削減」を強調して南での「安保不安」を煽り、北南間の和解と協力、統一ムードに水を差すため、である。 米国はこれからの3年間に110億ドルを投入し、南朝鮮駐屯米軍をアジア地域における迅速機動軍として再編、強化する。その一方で、南朝鮮軍への作戦指揮統制権の変換やSOFA改定は拒否している。 米国が南朝鮮駐屯米軍の「削減」や「再配置」「撤退」をうんぬんするのは今回が初めてではない。1945年から5回にわたって「削減」「撤退」は行われたが、そのたびに米軍武力はさらに強化され、戦争策動もさらに増大している。 また、ブッシュ政権は毎年、南朝鮮とアジア、米本土の米軍を投入し対朝鮮秘密作戦計画を樹立し、その習熟演習を行っている。 日本を拠点、発進基地に ブッシュ政権はアジアでの米軍再編、再配置において日本を重視している。 米国はすでにワシントン州の米陸軍第1軍団司令部を駐日米軍司令部のある座間基地(神奈川県)に移転。グアム島アンダーソン基地の米13空軍司令部を米5空軍司令部のある横田基地(東京都)に統合することと、アジアの陸海空および海兵隊司令部を日本に統合する構想を日本当局に通達した。 これは、駐日米軍がアジア地域の司令部になることを意味しており、日本当局も積極的に呼応している。 これらの米軍再編はすべて朝鮮半島に向けられたものであり、1月下旬に行われた米軍、自衛隊の合同演習「山桜−45」の目的が朝鮮に向けられていることからも如実にうかがえる。 以上見てきたように、ブッシュ政権が進める世界的な米軍再編は、南朝鮮を北侵戦争の基地としてだけではなく、世界的規模での侵略戦争の発進基地にしようとするものである。また、米日の軍事一体化はさらに進み、駐日米軍がアジア地域司令部になるばかりでなく、世界的な発進拠点となる展望だ。 しかし、ブッシュ政権は世界からの孤立を自ら招いており、米軍再編ではなく撤退させなければならない。また、イラクでの教訓を生かし、国際的協調へと戻るべきだ。(韓桂玉=大阪経済法科大学客員教授、軍事評論家) [朝鮮新報 2004.10.16] |