第47回日弁連シンポジウム、民族教育への理解訴え、朝大生、九州朝高生ら発言 |
第47回日弁連人権擁護大会第1分科会シンポジウム「多民族、多文化の共生する社会をめざして〜外国人の人権基本法を制定しよう〜」が7日、宮崎県宮崎市のシェラトン・リゾート・フェニックス・シーガイヤ「サミットホール」で行われた。参加者らに多民族、多文化共生の空間を実際に体験してもらうことを目的に開催された同シンポには、研究者や市民団体、民族団体、労組、協会関係者、弁護士、高校生ら各階層の人々が参加した。また、シンポでは総連関係者、朝鮮学校生徒らが民族教育への理解を訴えるとともに、差別をなくすためにも相互理解を深めることの重要性などを強調した。 差別の現状訴える
第1分科会では、シンポジウムを中心に▼年金や医療保険の加入や支給にも制限がある▼自民族の言葉などを学ぶ民族教育が保障されていない▼結婚、就職、住居、医療などあらゆる場面での差別がある−など、外国人の基本的人権が侵害されている現状などについて議論を深めた。 同シンポは、「1部−問題提起、基調報告」「2部−当事者の主張、特別報告」「3部−パネルディスカッション、多文化表現」で構成された。 2部の「当事者の主張」では、朝鮮大学校の金秀香さん(4年、政経学部・法律学科)、九州朝鮮中高級学校の金智史さん(高3)が発言した。3部のパネルディスカッションは、「外国人及び民族的少数者の現状と課題」「多民族、多文化共生社会への展望」の2部門に分かれて行われた。また、「多文化表現」には、九州朝鮮中高級学校の高級部舞踊部が出演した。 金秀香さんは、在日コリアンであるがゆえに、日本社会で違和感や居心地の悪さを感じたり、嫌な気持ちになったことがあることを実例を挙げて説明した。
2003年に国立大学受験資格問題の改善を求める署名運動に参加した際には、多くの日本人が署名に参加してくれた半面、「自分たちの権利ばかり主張するな」「大学で学びたければ文科省の規定通り、日本の学校に通えばいい」「日本社会のルールに従えないのなら国に帰ればいい」などと言われたこともあった。金さんはその際、朝鮮人がなぜ日本にいるかもまったくわかっていないことに悔しさを覚えるとともに、自分たちが「見えない存在」、つまりは知られていないことを痛感したという。 「さまざまな差別を克服するにあたって最も重要なことは、お互いがお互いを知ること。…知らないということは一種の恐怖を生む」としながら、「真実を知り、相互理解を深め、共に生きるための法制度的な仕組みを作っていくことが、差別を克服していくための第一歩」だと述べた。 「在日同胞をはじめ日本の高齢化社会を支えることのできる社会福祉士になりたい」と語る金智史さんは、日本の高校の卒業資格を得るため、ダブルスクールの道を選んだ。 負担から逃れるためには、日本名で日本学校に通うか、帰化すればいいといわれるが、「私を含め、朝鮮学校に通う数多くの学生たちは、たとえ差別を受け、負担を強いられても朝鮮人として自分らしく生きようと考えた」ため、その道を選ばなかったと語った。 「できることなら次の世代には同じ負担を味合わせたくない。これは在日朝鮮人の夢でもある」と述べ、「その夢は、ここにいらっしゃるすべての人たちのご尽力なしには実現することができない」と参加者らに呼びかけた。 第2初級裁判も 一方、8日には「宮崎NGO交流会&意見交換会」が、宮崎県弁護士会館で行われ、前日のシンポジウムの感想、今後の共同課題についての意見交換が行われた。
会では、総連東京都本部の李昌興教育部長、女性同盟中央の金錦汝子女教養部長が発言した。 李部長は、「今回のシンポに参加して、これだけの多くの人たちが外国人の人権問題に真摯に取り組んでいることに勇気をもらった」として、昨年の国立大学受験資格問題の時に、弁護士、市民団体、NGOの人たちとの共闘が難題を克服する大きな力となったと指摘した。 また、東京朝鮮第2初級学校(東京都江東区)のグラウンド問題をめぐって都と法廷闘争中であることに触れ、「その裁判を担ってくれているのが、今度の人権擁護大会第1分科の実行委員たちである。昨年、朝鮮学校に対するいやがらせ撲滅キャンペーンのポスターを都内の交通機関に無償で掲載してくれたのも、最初は東京弁護士会から、そして日弁連へと広がった」と述べた。 さらに、第2初級学校の裁判では、60を超える日本の市民団体が支援してくれており、大きな潮流が生まれているとしながら、「無償貸借を決めた、当時の都の行政的判断を美濃部都知事の政治判断とし、現在の石原都知事も政治的判断をしているからやむをえないではないかというような『稚拙な論理』で逃げ切ろうとしている東京都に歴史と権利をきちんと学ばせる良い機会と考えている」と語った。 [朝鮮新報 2004.10.14] |