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新潟での朝・日親善の動き、友好は草の根活動から

会館にハングル教室

板門店を訪れたNGO人道支援連絡会訪朝団

 ここは、昨年銃撃事件があった総聯新潟県本部(新潟市)の会館。いまだ緊張の漂う本部ではあるが、週に一度、約20人の日本の人たちが「アンニョンハセヨ」と1階ロビーに集まってくる。最年少は15歳の高校生、最年長は77歳という幅広い層の人たちが朝鮮語を学びにやってくる。

 ハングル教室は昨年6月に開講した。日本のマスコミによる反朝鮮・反総聯キャンペーンが執拗に展開され、朝・日関係が最も険悪な状態にあった時だ。新潟の同胞たちも絶望と不安に苛まれ、活動にも大きな支障があった。そんな時期に、「このままではいけない。何とか日本の人たちと連帯を持ち、一人でも支持者、理解者を増やし協力し合う雰囲気を作り上げなくては」という目的のもと、総聯県本部が設けたものだ。

ハングル教室第1回発表会

 NGO役員、新聞記者、医者、団体職員、主婦に学生と職種も多種多様なので、いろんな話が飛び交い実におもしろい。

 ここでは言葉を教えるだけでなく、年に1回の焼肉パーティー、冬にはチゲ鍋パーティーを催し朝鮮の食文化と触れ合うようにしている。4月には1年間の講習の成果を受講生が発表する場も設けられている。

 受講生の1人、玉木文子さん(23)は、「ハングル教室に入りいろんなことを学んだ。朝鮮半島について何もわかっていないのだと思った。これからもっと勉強していきたい」。玉木さんは新潟市民で作る「ビビンバの会」に参加し南北朝鮮について勉強中だ。

 「ビビンバの会」を立ち上げたのは新潟市役所国際課に勤める金子博昭さん。昨年、「南北コリアとにいがたの日本の友だち展」を開き南北朝鮮の子どもたちと新潟朝鮮初中級学校の生徒、新潟市内の日本学校の子どもたちの絵を展示した。

「ビビンバの会」学習会

 「朝鮮問題とは韓国ばかりを言うのではない。日本の人は共和国にももっと目を向けねばならないと思う。南北コリアンと日本人が互いに手を取り合ってこそ、アジアの平和が築けるのだと信じている」(金子さん)

 同会では、共通点を見出しながら共和国を理解しようと、「プルガサリ」と「ゴジラ」の同時鑑賞会を設けるなど、運営にも工夫をこらしている。現在会員は20人ほど。「在日朝鮮人とは」「NGOの共和国人道支援」「南朝鮮での留学時代」等さまざまなテーマに基づき、1カ月に一度学習会を開いている。

 7月1日には「ワンコリア新潟市民の集いビビンバ」が行われた。ビビンバのように混ざり合い心と心が通じ合う関係を築き、朝鮮半島での統一、北東アジアの平和を実現しようとの趣旨で開かれ、合唱、チョゴリファッションショーなどさまざまな出し物が披露された。

一般市民らが訪朝

 新潟NGO人道支援連絡会訪朝団が7月27日から8月9日まで訪朝した。同連絡会代表の川村邦彦氏は、7年間にわたって子ども向けに1300トンの米支援を行ってきた。一番苦しい時に支援を続けてきた川村氏だけに、朝鮮側の信頼も厚い。

 今回のスタディーツアーは、一般の人たちに朝鮮の現状を直に見てもらい、多くの日本人が行き来することで人の道を作り、朝・日国交正常化を促進しようという目的で企画された。「万景峰92」号が入出港する新潟では、そうした運動が不可欠だ。今回の訪朝団には、米を支援する農民、平和運動センター事務局長、マスコミ、学者、建設業者など総勢17人が参加した。

 一行は協同農場、託児所を視察した。平壌、元山の農場で現地の人たちとも話し合った。

 「今、朝鮮に必要なのはエネルギー。機械があっても燃料が不足しているから人や牛に頼るしかない。この問題は一国で解決できるものではない。国際的な援助によって、農業での自立が成立する」(農業専門家)

 託児所の子どもたちが年ごとに元気になるのがうれしいという川村氏は、持っていった栄養菓子を分けたという。

 金剛山にも登った。南から来た600人の観光客に驚き、南北の交流が盛んなのを目の当たりにしたあるメンバーは、「早く南北がこのように一緒になればすばらしい」と語っていた。

マスコミでも特集

 新潟情報大学の教授は、「初めての訪朝で、今までのステレオタイプの朝鮮観が崩れた」と話す。玉流館でピョンヤン冷麺を食し、「ピョンヤン冷麺が一番です」と感嘆していた。

 川村氏は、「これからは人的交流を頻ぱんに行っていこうと思う。両国間に携わるさまざまな懸案問題は、正常な形で解決するのが一番大切だ」とスタディーツアーをふりかえった。

 今、新潟日報や新潟ローカル番組NT21などのマスコミで朝鮮問題を取り上げているが、いずれも平壌宣言に基づき友好関係を結ぶため相互理解を深めること、国交正常化へと進むべきだという論調だ。

 日本人拉致が明らかになった2002年9月17日以降、マスコミによる朝鮮バッシングは、拉致被害者の最も多かった新潟に集中し、総聯本部や学校に対する誹ぼう中傷が後を絶たなかった。朝鮮民族としての誇りやルーツにかかわる朝鮮、民族、祖国を否定的にとらえる社会環境がかもし出され、同胞たちに祖国の情報を伝えるイルクン、民族のアイデンティティーを教える学校教員たちの悩みも尽きない。

 こうした中で、日本の人たちとの交流を深める重要さが増している。相互理解とは、直接会って話し合い、全身で表現する過程で築き上げられていくと思う。

 1年以上にわたってこの仕事に携わりながら得た結論である。(安正順、総聯新潟県本部)

[朝鮮新報 2004.9.7]