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〈小泉首相の平壌訪問〉 平壌宣言の履行と両国間の信頼回復を

 小泉首相が22日、平壌を訪問する。目的は、平壌宣言の履行と朝・日間の信頼関係回復を計るためだと双方が確認している。両国関係の膠着状態が打開され、過去の清算をはじめとする宣言の履行が期待されている。

過去の清算が基本

 朝鮮側は、平壌宣言を重視し、一貫して宣言の履行を日本側に促してきた。一方、日本側も「日朝平壌宣言の履行が大事だ」(小泉首相)としている。ならば当然、会談では平壌宣言で言及された過去の清算問題が話し合われるだろう。

 朝鮮は、宣言の履行で基本中の基本は過去の清算問題だと、再三強調している。

 一方日本は、宣言で「過去の植民地支配により朝鮮人民に多大な損害と苦痛を与えた歴史的事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からの謝罪の意」(2項)を示した。が、過去の清算問題はいまだ手つかずの状態だ。

 そもそも、両国が正常化に向かう道筋となる平壌宣言が採択されたのは、「日本の総理が史上初めてわが国を訪問して罪多き過去を公式に謝罪し、それを清算しようとする意志をしめした」(朝鮮外務省)からだ。

 宣言発表後初めて行われた朝・日政府間交渉で朝鮮は、宣言の順序に沿ってまず早期に国交を樹立するための問題を論議し、これに平行して経済協力と懸案事項の解決問題を話し合っていくことを提案。しかし日本は関係正常化論議に先立ち、拉致、核問題と関連した要求を一方的につきつけ、これを前提条件に掲げたため平行線をたどった。

 朝鮮は国交正常化の速やかな実現を主張していたが、平壌宣言発表1周年に際した外務省談話を発表を通じ、過去の清算が正常化の前提条件になるとの立場を表明した。

 朝・日関係を正常化するためには、過去の清算は避けて通れない。

さらに悪化した敵対関係

 半世紀以上にわたりきわめて非正常な関係、敵対関係にあった朝・日関係は、宣言の発表により、正常化に向かう道筋ができ、転換的な改善の局面を迎えることになった。両国は、非正常な過去を清算して、懸案事項を解決し、新たなスタートを切るはずだった。朝鮮は拉致の事実も認め、被害者らを日本に返した。この時点で日本は過去の清算問題解決に着手すべきだった。

 しかしこの間、両国関係は以前よりさらに悪化した。

 日本は、宣言の精神に背いて、「拉致問題を朝鮮に反対する政治目的に悪用」(朝鮮中央通信論評)しながら、対朝鮮敵視政策を続ける米国に追従した。追従に終わらず、朝鮮に対する制裁を視野に入れた外為法を改正し、6者会談に核問題とは何の関係もない拉致問題を持ち込み人為的な障害をつくるなど、その先頭に立って反朝鮮キャンペーンを繰り広げた。これらは明らかに平壌宣言の精神に反する行為だ。宣言に記された内容で日本が履行した項目は何ひとつない。

 今回の小泉首相の訪問によって、日本は宣言の原点に戻り、宣言履行が本格スタートすることが期待される。

米追従からの脱皮を

 宣言発表から1年8カ月。朝鮮半島を取り巻く情勢は大きく変わった。

 宣言発表直後の10月に訪朝したケリー米大統領特使が、朝鮮が核開発を認めたと発表したことから朝鮮半島情勢は一気に緊張した。KEDOの重油提供を米国が一方的に中断したことに対抗し、朝鮮はNPTから脱退。そして核抑止力を強化することを宣言した。

 現在、朝鮮半島核問題のための6者会談が行われているが、米国は朝鮮敵視政策を続けながら、「完全かつ検証可能で後戻りできない核放棄」を追求している。しかし、中国とロシアは、朝鮮の「凍結対補償」案を支持し、南朝鮮もこれに理解。12日から15日まで北京で行われた6者会談実務グループ会談では、「米国の立場は誰からの支持も得られなかった」(朝鮮外務省)。

 この間朝鮮は、中国、ロシアと活発な外交活動を行って関係を強化してきた。北南関係も発展の一途をたどっている。

 こういう状況で、日本の決断が迫られている。朝・日が国交正常化に向かうことは、日本にとっては、対朝鮮敵視政策を取っている米国追従からの脱皮を意味する。今後日本が、独自外交に移行できるかどうかが焦点となる。

[朝鮮新報 2004.5.21]