人権協会公開学習会、地域の取り組みに学ぶ |
東京第9初級アボジ会OB 金容星さんが出演 在日本朝鮮人人権協会主催の公開学習会「地域の取り組みに学ぶシリーズ」の第2回目が8日、東京都台東区の同胞法律・生活センターで行われた。東京朝鮮第9初級学校(東京都杉並区)アボジ会OBで建築家の金容星さんが、「多文化共生時代の技と知恵−東京朝鮮第9初級学校における『アボジ』と『オモニ』の地域交流に学ぶ―」と題して講演した。 「地域に開かれたバザー」が好評
1996年に結成された同校アボジ会では、「地域に開かれた朝鮮学校を」という理念のもとに、バザーや演劇、学芸会やキャンプなどの学校行事を通じて、近隣の住民、小学校の生徒と学父母、杉並区議らとの交流を深め、民族教育に対する理解と行政の支援を得てきた。 結成当初から中心的役割を果たしてきた金さんは、「学校支援、地域交流、行政の理解」の3点に絞って活動してきたと語る。 最初の活動は、学校のメンテナンスだった。参加した約20人のアボジたちは、ビールを片手に互いに親ぼくを深め、日本の人々から理解を得るためには、まず自分たちから門を開かねばとの考えから、「地域に開かれたバザーを行おう」と話し合った。ここから地域社会への積極的な取り組みが始まった。 地域住民と近隣小学校の生徒、父母らを招いたバザーは好評を博した。学校周辺の区立小学校のPTAや父母らとの懇談会、公開授業なども行った。バザーの収益の一部は区に寄付した。このような過程を通じて、朝鮮学校と民族教育に対する理解は徐々に深まり、近隣小学校の父母らとの交流も活発になった。とくに、杉並第一小学校のおやじ会(すぎいち会)との交流を足がかりに、杉並第一小学校、馬橋小学校との親交を深めた。 夏は杉一小がデイ・キャンプを、秋は東京第9がバザーを、冬は馬橋小がやきいも大会を開催し、3校の生徒、父母、学校関係者たちが互いに行き来する「トライアングル」を形成。これは定例行事となっている。 毎年地元の綱引き大会にも参加した。00年7月には、アボジ会とおやじ会の共催でうた芝居「さんねん峠」を上演した。 金さんらの地道な活動によって、地域社会に朝鮮学校の存在が着実に根付いていった。 プールがなくて水泳の授業を満足に受けられない朝鮮学校の生徒らを気遣った杉一小の校長(当時)は、教育委員長にかけあい、小学校のプールを提供してくれた。同校の教頭先生が水泳指導までしてくれたという。 アボジ会の活動は行政をも突き動かした。運動場を整備した際には、杉並区が業者の紹介から保証まで引き受け、防災ベルやインターホン、スクールゾーンの設置など、多岐にわたって支援するようになった。 「わからなくても行動すること」 「違った観点から見ればいろんなことがわかってくる」と金さんは語る。 「区の予算書を見て研究するうちに何ができるかが見えてきた」と言う金さん。これ以上、助成金のアップが望めないと気付き、教育助成金増額を要求する従来の方法から一転、「朝鮮学校に限ったものを、朝鮮学校独自の項目に関する支援を」との要求に切り替えた。 以前は区の施設を借りて行っていた学芸会を、朝・日友好親善子供の集いとして杉一小の生徒たちに友情出演してもらうことで、区が後援から主催者側に回り、施設提供までしてくれたという。 学習会では、当時の中杉支部女性同盟委員長で、金さんと共に活動してきた申静子さん(東京第9初級オモニ会初代会長)も発言した。 「目先の欲よりも地道に」との考えから、「用もないのに議員会館に通ったこともある」という申さん。区議をはじめ日本人らと顔なじみになったことで、彼らが次第に協力してくれるようになったという。 「わからなくてもとにかく行動することが大切。そうすると目に見えない形で波及していく」(申さん)(李泰鎬記者) 次回は7月に予定。詳しくは人権協会事務局まで。TEL 03・3837・2820。 [朝鮮新報 2004.5.18] |