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「北朝鮮・寧辺原子力研究センター」訪問に関する米上院外交委員会公聴会報告(5)

高濃縮ウラン問題

 外務省で我々は、朝鮮側が2002年10月4日に、1994年の枠組み合意を形式、精神共に違反して秘密裏に高濃縮ウラン計画を進めていたことを認めたとされ、論争を起こしている問題について議論した。朝鮮が米国政府の官僚との会談でそのような計画を持っていたことを認めたかどうかを巡って論争が起こっている。意見の不一致は、朝鮮の官僚が述べたと思っていることと、米国の官僚が自ら聞いたと信じていることの間に存在する相違に関するものである。朝鮮の官僚は、姜錫柱第1外務次官が会談で行った発言の(朝鮮語テキストの)コピーを我々に提供した。この問題がどのように最終的に明らかにされるかということには関係なく、事実そのものを取り扱わなくてはならないだろう。

 会談中、プリチャード氏は述べた。「主要問題は、米国をして朝鮮が高濃縮ウラン計画を持っていると信じさせる情報にある。米国では、この高濃縮ウラン計画問題の完全かつ検証可能な解決はもはや義務的であるという見方が広く認められている。これは実際的な問題であり、その解決のために多国間協議を行うべきだ」。これを受けて金桂官次官は、朝鮮は高濃縮ウラン計画は持っていないと述べた。さらに突っ込んだ質問に対して彼は、朝鮮はプルトニウムによる抑止力への道を選択したと述べた。朝鮮には高濃縮ウラン計画のための施設や設備もなければ科学者もいないとしながら、彼は付言した。「我々はこのことについて話すときは真剣である。我々は実務的な会談には完全にオープンだ」。

結びに代えて

 我々の寧辺原子力研究センター訪問並びに平壌での協議に基づいて、私の観察を要約したい。

 ―5メガワットの原子炉は再稼働された。同炉は、熱と電力を円滑に供給しているようにうかがえるが、その一方でまた、その使用済み燃料棒で年間、およそ6キログラムのプルトニウムを蓄積している。

 ―50メガワット原子炉の建設現場では、2002年にIAEA査察団が退去を言い渡されて以来、何ら活動もないように見受けられる。本原子炉と建設現場は、修理状態にあるように見える。炉を完成させるには本格的な建設計画を要するだろう。

 ―使用済み燃料のプールは空になっており、約8000本の燃料棒はよそに移されていた。

 ―朝鮮は、2003年1月中旬より2003年6月末の間に継続的に行われた作業中にプルトニウムメタルを抽出するため8000本の燃料棒をすべて再処理したと主張した。8000本の燃料棒が含むプルトニウムメタルは、推定で25〜30キログラムである。我々としては、その主張を確実に実証できなかった。しかしながら、放射化学実験室のスタッフは、必要な施設や設備そして技術的専門知識を持っていることを明らかにし、実際にそうする能力を備えているように見える。

 ―彼らが8000本の燃料棒を他の格納先に移動したということはありうる。だが、そのような貯蔵方法は深刻な健康、安全上の危害をもたらすかも知れない。

 ―我々は、プルトニウムメタルの生成物の標本とされるものを見せられた。我々が見たものが実際にプルトニウムメタルであるかは明確に確認できなかったが、私が観察できたものはすべてプルトニウムメタルの標本と一致した。しかし、その標本がプルトニウムメタルだったとしても、それが最近の再処理作業で抽出されたプルトニウムであることを立証することはできなかったであろう。そうした判断を下すには、より高度な測定が必要である。

 ―当面は、朝鮮は5メガワット原子炉で年に6キログラムのプルトニウムを製造できる。朝鮮にとっては、プルトニウムを抽出するためにいつでも使用済み燃料を再処理する能力を保有するのはたやすいことである。また、原子炉に新しい燃料を再装てんし、2度、3度と再装てんを続ける能力も持っている。しかし朝鮮は、50メガワットあるいは200メガワット原子炉の場所での本格的な建設計画なしには、年間6キログラムを超えるほどのプルトニウムの生産率を高める(それは秘密裏に進めることは困難であろう)ことができる状況ではない。

 ―朝鮮外務省の官僚たちは、同国が大量破壊兵器を保有していると主張した。彼らは、その「抑止力」の証拠を我々に示したと信じている。寧辺で彼らが示したのは、プルトニウムメタルを作る能力を持った可能性が最も高いということである。だが私は、彼らがそのメタルで核装置を造ることができ、またそのような装置を運搬手段へと兵器化できる、と私を納得させるだけのものを見なかったし、そうできる人とも話すことはなかった。我々は、そうした専門知識を持っているであろう人との面会、あるいは関連施設への訪問を手配することはできなかった。

 ―朝鮮外務省の官僚たちはまた、同国がウラン濃縮計画を持っていないと断言した。さらに、彼らはそうするための設備も科学的専門知識も持ち合わせていないと主張している。我々にはこうした主張の確証はできなかった。

 私が朝鮮を発つ前に同国のホストたちとこうした結論を共有したということを明確にして、私の報告を締めくくりたいと思う。私の観察にはまだ不明確な点がある、と私は彼らに伝えた。追加的分析や専門家による査読、その他の米国の専門家との協議を通じて、不明確な点をいくらか減らすことができるかも知れない。私は、そうするつもりであり、今後、より包括的で専門的な報告書を書こうと思っている。朝鮮の官僚たちは、私の結論がよりいっそう信頼のおけるものになることを望んでいたが、反応は極めて肯定的であった。彼らは、私が彼らに示した通りに私の観察を報告するよう求めた。

 最後になるが、私は今回の旅行がすばらしいということが分かった。我々を受け入れた朝鮮のホストたちは、最も礼儀正しくかつ協力的だった。私は、「朝鮮の核パズル(Korean Nuclear Puzzle)」についてのオルブライト/オニールの著書、国務省・エネルギー省の使用済み缶詰め作業チームからの報告を受け取ったこと、そしてロス・アラモスにいる数人の同僚と議論を交わしたこと、そして、こうしたことすべてが私が今回訪朝を準備するのに役立ったということを認めるものである。我々の調査が少なくとも、現在の核危機の解決と朝鮮半島の最終的な非核化に向けてささやかながら寄与することを願う。我々の調査結果をみなさんと共有する機会を与えてくれたことに感謝する。(シーグフリード・S・ヘッカー、カリフォルニア大学ロス・アラモス国立研究所首席研究員)(翻訳、まとめ=姜奈於記者) 

[朝鮮新報 2004.5.10]