top_rogo.gif (16396 bytes)

「北朝鮮・寧辺原子力研究センター」訪問に関する米上院外交委員会公聴会報告(4)

 我々は、最終的なプルトニウム処理作業のためのグローブ・ボックスを見ることはできなかった。しかし、彼らのコメントの意味するところは、彼らがプルトニウムメタル製造用のグローブ・ボックスを稼動させる準備が整ったということだった。これは1992年のIAEAの査察が始まる前に彼らがプルトニウムメタルを製造する経験を既にしていたことを示している。オルブライトは、問題の8000本の使用済み燃料棒が25〜30キログラムのプルトニウムメタルを生産できると見積もった。

 我々はプルトニウム・グローブ・ボックスを見ることはできなかったが、彼らは、一番最近の再処理作業によるものだと主張する「製品」を我々に見せるという特別措置を講じた。参観後に会議室で、彼らは木箱が入ったメタルケースを検査用として我々に差し出したが、その中には、150グラムのプルトニウム・シュウ酸塩パウダーが入っているというガラス・ジャーと200グラムのプルトニウムメタルが入っているというガラス・ジャーが納められていた。

 2本のガラス・ジャーは回して取り付ける金属の蓋が付いており、透明なテープで固く留められていた。(プルトニウムのα線はガラス・ジャーによって簡単に止められる)。プルトニウム・シュウ酸塩パウダーの緑色は、しばらく空気の中に置かれたプルトニウム・シュウ酸塩と一致する。プルトニウムメタルは、彼らがこの再処理作業の鋳造から出るくずであると主張する薄壁(約8分の1インチの厚さ)のじょうご(基底部の直径が約2インチ、最上部の直径が約1インチ、高さが約1.5インチ)だった。その濃度について尋ねたところ、彼らは「15〜16グラム/立方センチメートルで合金にしたものだ」と答えた。メタルの表面とその色は鋳造から適度に酸化させたプルトニウムメタルと一致した(それからはふわふわした粉末酸化物がまったく見あたらない点からして、何週間もの間ジャーには入っていなかったと思う)。私はガラス・ジャーを手袋をはめた手でつかみ、プルトニウムメタルとされる物の濃度と熱含量の感触をつかもうとした。その(とても厚い)ガラス・ジャーはかなり重く、少し温かかった(重要なのはそれが間違いなくこのビルの中の他のもの全てと同じほどには冷たくはなかったということだ)。結論を言えば、手元にあったかなり原始的な道具ではメタルとされるものと粉末状のものがプルトニウムだとは明確には確認できなかった。しかし、それは放射性のものであった。なぜならガラス・ジャーの入った木の箱に放射能検知機を近づけると、検知機が反応したからだ。いくつかの比較的簡単なテストによって我々はその生成物がプルトニウムメタルだと、はっきり確認することができただろうが、訪問中はそれは不可能だった。

 さらに我々は、見せられた生成物がプルトニウムだと確証することができたとしても、プルトニウムの「年齢」を確認することができる追加的な、そしてさらに精巧な同位体測定なしには、それがごく最近の作業によるものなのか、確認はできない。原子力センターの所長は「あなた方は、プルトニウムの年齢を測定するためにはアメリシウム(超ウラン元素の一種)とプルトニウム−241の比率を測らなければならないだろう」と述べながらこれを確認した。彼は正しかった。

 プルトニウムの同位体の含有量、厳密に言えば、プルトニウム−240の含有量についての質問に対して彼らは、「今回の作業によるプルトニウム−240量は低い。しかし我々はあなた方に話すことを許可されていない。IAEAは知っている。彼らに尋ねると良い」と述べた。我々は抽出された、あるいは我々が見せられたプルトニウムの同位体量を判断できる立場にはなかった。

 彼らはまた、プルトニウムメタルが合金されたものだと述べたが、どの合金化元素が用いられたかについては我々に話す権限が彼らにはなかった。我々は、見せられたプルトニウムメタルが合金なのかどうか、話せる立場ではなかった。しかし、それにはひびが入っていないことや、彼らの中の専門家の、プルトニウムの濃度は15〜16グラム/立方センチメートルの間だとの主張は、約1重量%のガリウムかアルミニウムと混ぜられたプルトニウムと一致する。おおよその寸法と重量の計算もまた、その値と合致する。しかし、私の観察も極めて不確かなものである。

 ルース氏が核物質の安全性についての懸念をぶつけたところ、リ所長は「この問題については安心して良い。このことについて私は、あなた方に説明する権限を与えられていないが、防護と安全性の面は良いと我々は感じている」と答えた。

 我々はまた、追加的凍結や非核化の決定が作業員に破滅的な影響を及ぼすであろうと言われた。リ所長は、彼を含め、スタッフ全員が新しい仕事を探さなくてはならなくなるだろうと述べた。

核問題に関するその他の観察とコメント

 朝鮮の「抑止力」−平壌での李大使と金次官とのフォローアップ討論の間、彼らは朝鮮が今や核抑止力を保有しており、米国の行動が彼らの抑止力を質、量ともに強化させる原因となっていると強調した。李大使は、寧辺で私が見たものが、彼らの抑止力保持について私を納得させるものだったかどうかと尋ねた。

 私は、我々が寧辺原子力研究センターで見たものの中で、核装置あるいは核兵器という意味での核抑止力を朝鮮側が保有しているかどうかを判断できるものは何もない、と2人に説明した。我々は今回の訪問中も、朝鮮政府の以前の宣言においても、「抑止力」という用語が極めてあいまいに用いられていることが分かった。

 私は、「抑止力」には少なくとも次の3つの構成要素−1)プルトニウムメタルを作る能力、2)核装置を設計し製造する能力、3)核装置を運搬システムに組み入れる能力−があるという私の考えを説明した。我々が寧辺で見たものは、明らかに彼らが1)の能力を保有しているということを意味する。しかしながら、私は彼らが核装置を設計する能力を有しているかどうかを判断させてくれる人とは話をしなかったし、何も見なかった。また、当然のことだが、我々は運搬手段への組み込みについては判断する術を持たなかった。さらに、追加的なディスカッションの中で私は、「抑止力」というものは、互いに予測が可能な状況にあり互角に核武装した超大国である米国とロシアの間で働いたかも知れない性格のものだ、と忠告した。核抑止力という概念は、米朝間の状況ではほとんど意味を持たない。私は訪朝最終日の昼前、私が指摘した意味合いで、彼らの「抑止力」についていくらか詳細に説明してくれる個人に会えないだろうか、と李大使に尋ねた。彼は努力してみると言ったが、その日の夕方になって、そのように手配するには時間が足りないと私に話した。(イタリック体活字は朝鮮側関係者の説明)(シーグフリード・S・ヘッカー、カリフォルニア大学ロス・アラモス国立研究所首席研究員)(翻訳、まとめ=姜奈於記者)

[朝鮮新報 2004.5.7]