「北朝鮮・寧辺原子力研究センター」訪問に関する米上院外交委員会公聴会報告(1) |
今年1月21日に行われた「北朝鮮・寧辺原子力研究センター」訪問に関する米上院外交委員会公聴会での、シーグフリード・S・ヘッカーカリフォルニア大学ロス・アラモス国立研究所首席研究員の報告内容を5回にわたって紹介する。 背景 私はスタンフォード大学のジョン・W・ルイス(John
W.Lewis)教授率いる米国の非公式代表団の一員として朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)を訪問し、寧辺の原子力研究センターを訪れた。
ルイス教授はスタンフォード大学で中国と朝鮮問題を専門とする学者である。ルイス教授の訪問は、北の核問題と関係する朝鮮当局者との継続中の対話の一環であった。教授は、1987年にこの対話を開始して以来10回朝鮮を訪れた。教授が前回訪朝したのは、昨年8月の公式的な6者会談の直前だった。朝鮮政府関係者たちが彼に寧辺原子力研究センターの核施設への訪問を許すと示唆した際、彼は私に科学的専門知識を提供するために同行するよう連絡してきた。 カリフォルニア大学エネルギー学部が運営するロス・アラモス国立研究所に勤めている関係上、私は中国と朝鮮への訪問に必要な政府の許可を得た。 私はルイス教授を約15年前から知っている。私たちは他のグローバルな安全保障問題について共同研究したことがある。 ルイス教授の招きで代表団に加わったのは、ブルッキングス研究所の客員研究員であり元米朝交渉担当特使であるチャールズ・L・(ジャック)・プリチャード氏、上院外交委員会アジア問題担当の専門家2人―ルース(Luse)氏とジャヌッジ(Januzzi)氏である。両氏は別途に訪朝計画を立てた。両氏は朝鮮で我々の団に合流し、寧辺原子力研究センター訪問に参加した。 今回の訪問のホスト役を務めた部署は朝鮮外務省である。李根大使が全ての日程に同行した。金桂官外務次官とは別個に3回会談した。さらにルイス教授は、原子力研究センター訪問に加えて経済、軍事、科学の問題を話し合うため朝鮮政府関係者との会談をアレンジした。ルース氏とジャヌッジ氏は、単独で追加的会談を持った。私は、書面による報告を自分の専門知識である核問題の分野に限定する。より具体的に言うと、寧辺原子力研究センター訪問中に私たちが知り得たことに焦点を合わせて報告する。 我々の訪問についての朝鮮側の発言と動機 金桂官次官は、彼らが6者会談の再開にとても興味を持っていることを示唆した。朝鮮は、2003年12月9日に核活動を凍結する提案をしたが、米国からは何の返答も得られなかった。金次官は朝鮮側が繰り返しこの提案を行い、今回パウエル長官がこれに肯定的に応えたと指摘した。(2004年1月7日のAFP通信でのパウエル長官の発言=これ(提案)はとても興味深い措置であり、肯定的な措置だ。我々は6者の枠組み会談に向けてより迅速に進むことを望む。私は朝鮮の(核凍結)表明に勇気づけられた)。 金次官は「最も合理的な方法は同時行動の措置を講じることである。…米国は我々が核計画を廃棄すれば我が国の安全を保証すると言う。我々は、それは別だと言う。最初の措置は、現在の(朝鮮の)核活動の凍結かも知れない。あなた方は寧辺に行けば凍結がいかに重要であるかが分かるだろう。すなわち、核兵器の製造もテストも、そして運搬もしないということだ」と、明言した。
金次官は、「我々は代表団の寧辺訪問が(朝米間の)こう着状態を打破し、明るい未来を開くのに貢献すると考えている。我々はあなた方とゲームをするのではない。我々は寧辺に行くようあなた方を招待した。まずは透明性を確保することだ。今回の訪問で疑惑や間違いは減るだろう…。今回の訪問はすばらしい象徴的な意義を持つことになるだろう」と述べた。 「客観的に観察してもらいたい。結論はそちら側にまかせる。これはヘッカー氏が含まれていることがいかに意義深いかということを意味する」。プリチャード氏が、我々は非公式の団であり、査察チームではないことを強調した。金次官は続けた。「ヘッカー氏の存在が、我々があなた方に全てを話すことを可能にするだろう。(ヘッカー氏訪朝の許可は)我々にとっては特別な許可である。…我々もまた、あなた方が査察を行っているのではないことを強調する。しかし、我々がこの訪問を許可している限り、あなた方が良い知識を得られるように十分なアクセスを与えるつもりだ」。 金次官は2002年11月の米国の行動に基づいて、朝鮮がIAEAの査察を終わらせ、NPTから脱退することを決めたことを示唆した。朝鮮は5メガワット原子炉を稼動させ、平和目的での核活動のためにプルトニウムの再処理を再開することを決めた。彼は「それは、使用済み燃料棒を安全にしておくための唯一の方法である」としながら、「同時に、米国は敵視政策を強化していった。だから我々は目的を変え、平和目的で使用してきたプルトニウムを今では兵器として使いうるということを米国に伝えた。もともと我々は、再処理されたプルトニウムを安全に保管できる方法で維持したかった。しかしその後、我々は抑止力を強めるために目的を変更した」と語った。 金次官は朝鮮が核危機の平和的解決を望んでいると付け加えた。彼らは朝鮮半島の非核化を望んでいる。彼は朝鮮がとても柔軟で忍耐強く対応してきたことを強調したうえで、「(我々と交渉する間に)失った時間が米国側にとっては有益ではなかったことに言及しなくてはならない。時間の経過と共に、我々の核兵器は質も量も向上することができた。結果は、米国にとっては成功ではなかったということだ」と述べた。 私はここで、朝鮮が原子力研究センターに我々を招待するという同国の決定がどういう状況でなされたか、その政治的背景について話す。彼らはプルトニウムを抽出するために燃料棒を再処理し、「抑止力」を強めたと公言した。米国(と恐らく他の国も)が、彼らの言うことを信じなかったことと関係しているらしい。だから彼らは自らの主張の客観的な裏づけを与えるために、我々を招待したのだと思う。 しかし、金次官は寧辺に招待する決定に対して懸念も表明した。彼は「あなた方がもし米国に帰って、北はすでに核兵器を所有していると語れば、それは米国が我々を敵視する基となるかもしれない」と述べた。その後の会議でも彼はこのことに触れ、「我々はあなた方が出した結論を米政府が我々を攻撃する名目として使うのを懸念している。米国はこの訪問で、原子炉をすでに再開させた朝鮮がレッドラインを超えたことを立証したと主張するかもしれない。我々がもしも、再処理を終え、(平和目的から核兵器製造へと)目的を変えるなどして、すでにレッドラインを超えたと宣言しても、米国が行動を慎むと我々が確信することができるのか?」と述べた。(シーグフリード・S・ヘッカー、カリフォルニア大学ロス・アラモス国立研究所首席研究員)(翻訳、まとめ=姜奈於記者) [朝鮮新報 2004.4.23] |