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第12回人権研究交流集会〉 在日コリアン分科会から

 3月20〜21日に早稲田大学で行われた第12回人権研究交流集会(主催=第12回人権交流集会実行委員会、20日に全体会、21日に分科会=全14)。「在日コリアン分科会」が、在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会(以下、若手弁護士の会)によって開かれ、同会が作成した「堂々とチョゴリが着たい」と題したビデオ上映会、「堂々とチョゴリが着られる社会を目指して」をテーマにしたディスカッションが行われた。

 同分科会は、朝鮮学校生徒への嫌がらせの原因を探り、日本人と在日コリアンとの交流を通じて「民族」について共に考え若い世代にしっかり認識してもらおうと企画された。

 02年9月17日、朝・日首脳会談の席上、朝鮮が拉致の事実を認めた後、朝鮮学校に通う児童、生徒らに対する嫌がらせが増えているとの報告を受け、東京、埼玉、神奈川の新人弁護士有志14人が関東地方にある21の朝鮮学校、2710人の児童、生徒を対象にアンケート調査を実施。昨年6月20日に「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ実態調査報告集」を発表した。

 今回の分科会ではその報告書の要約が発表された。

 9.17以降、実際に嫌がらせの被害にあったと回答した生徒は、全回答者中522人(19.3%)。5人に1人が被害にあっているとの結果が発表された。「朝鮮人とは遊ばない」「俺のことも拉致するの? お前朝鮮人だろ」など、言葉による嫌がらせが圧倒的に多くなったという。24.4%が「在日コリアンや朝鮮学校を差別しないでほしい」と日本政府に望んでいるとの報告もあった。

 ディスカッションには、若手弁護士の会の松原拓郎弁護士、在日コリアン弁護士会協会事務局長の殷勇基弁護士、留学同中央の李東一副委員長、朝鮮大学校政治経済学部法律学科の学生、早稲田大学法学部の学生、日本の大学に通う在日コリアンの学生ら12人のパネラーが参加した。

 「嫌がらせの実体験について」「嫌がらせの原因」「民族とは何か?」などを在日コリアンと日本人、それぞれの立場から発言した。

 「嫌がらせが増えている原因」について早大法学部3年の佐々木元さんは、「日本社会の中には朝鮮人蔑視の感情があると思う。9.17以降は拉致報道の過熱ぶりが世論を助長させている」と述べた。

 「朝鮮学校に通ってよかったと思う点」については、「朝鮮人ということを隠す必要がなくてよかった」(中学まで朝鮮学校に通っていた日大4年の郭利美さん)、「民族の言葉、文化、歴史などを学ぶことで朝鮮人ということを十分、自覚できたので悩む必要がなかった」(朝鮮大学校政治経済学部法律学科2年の高景姫さん)などと語っていた。

 京都大学4年の丁智恵さんは、一貫して日本の学校に通ってきた。現在は南に留学中。そのきっかけを「自分の民族、文化を知るため」と話す。「昔は在日であることを隠し通し、過剰に反応していた部分は確かにあった。日本学校に通っている在日コリアンは出自について悩んでいる」と話した。

 「民族とは何か」については、さまざまな意見が交わされた。「ルーツを共にする集団」「言葉、歴史、文化を共有する人たち」「与えられたもの」「広義の家族」などパネラーたちが一言で表現。それ以外にも、「外国人、他民族を特別視する時」や「サッカー日本代表を応援している時」に民族を感じるなどの意見が出された。

 早大法学部4年の吉良昌雄さんは、「戦後補償の要求とか、過去先祖がやった事実に申し訳ない事があった時に『民族』というものを感じる」と述べる。同大学の佐々木さんは、「正直に言って民族というものを意識した事がない」と在日と日本人との立場の違いからくる発言も見られた。

 朝大政治経済経学部法律学科の許仁錫さんと郭さんは、「在日であることを隠さなくてもいい社会にならなければ。このような集会や活動はこれからも続けていってほしい」と口をそろえた。

 松原弁護士は、「朝鮮学校の生徒たちが堂々と暮らしていける社会を目指して、外国人差別に対する法制度の整備などに力を注いでいきたい」と語っていた。(金明c記者)

[朝鮮新報 2004.4.7]