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〈食糧支援訪朝記-下-〉 外為法改正は兵糧攻め

南北交流は当然のこと

 10カ月ぶりの訪朝であったが、変化の兆候を感じた。平壌市内ではスピッツと猫2匹を目にし、「苦難の行軍」を乗り切った朝鮮の人々が心の余裕を持ち始めていることを感じた。とりわけ印象に残った変化は韓国からの来訪者が増えていることだ。ホテルの食堂の3分の2は韓国人で占められていた。南北の人的交流はいまや大きな流れとなっている。2年前には「南の人だよ」と冷ややかに話していた朝鮮の人々も南北の人的交流を当然のことと受け止めているように思えた。

 滞在中に第8回南北経済協力推進委員会の結果が労働新聞に掲載されていた。「京義線道路は6月末まで、京義線鉄道は年末までに連結を完了し、東海線道路は年内に、東海線鉄道は来年までに完了することで合意した」と、対文協のスタッフが説明してくれた。

 板門店の検問所に入る前に「ソウル 70キロ」という新しい道路標識が目に付いた。昼食をとるために立ち寄った開城の入り口近くに、連結を待つばかりの京義線鉄道の新しい線路を目にした。朝鮮戦争時に南北が一進一退の戦闘を繰り広げた開城の一帯には離散家族が多く住み南北統合の思いがとりわけ強い、との説明も聞いた。

 沙里院市の人民委員会の方々との歓談で、同市に近い開城で進められている南北共同の工業団地開発が話題となった。イム・フン副委員長は、「スタートすれば沙里院市の経済もさらに発展するだろう」と期待を込めて語っていた。

駐在NGOは13にも

 朝鮮を訪れているのは南の人ばかりではない。ホテルにEUの商業代表団も宿泊していた。イタリアの自動車会社フィアットとの合弁で製造された自動車「フィッパラム(口笛)」の大きな広告板が平壌中央駅広場や高速道路沿いに出来ており、その車がホテルの前に駐車していた。国連や欧州のNGO関係の車も増えていた。現在、朝鮮に駐在員を置くNGOは13団体にのぼる。アイルランド、イタリア、スイス、ドイツ、フランスなどのNGOが開発援助としてインフラの整備などに持続的にかかわっている。

 翻って、日本のNGOはと考えさせられる。小さな団体が粉ミルクや米を支援しつづけているが、政治体制やイデオロギーを超えた、市民としての活動を標榜するNGOもまた、政治に取り込まれて、呪縛状態にあるのではないであろうか。

米でさえ支援継続

 政治に支配される社会では、たとえ人道とはいえ、支援活動には大きな困難をともなう。しかし、「歴史認識」も含めた、現在の「北朝鮮問題」の当事者である私たちは、朝鮮で確実に進んでいる変化を見落とすことなく、21世紀の北東アジアの平和という観点にたった戦略を立て、行動を展開しなければならないだろう。

 「圧力」としての外為法改正、特定船舶入港禁止法改正案は兵糧攻めである。それは、真の国交樹立には決してつながらず、飢えに苦しむ朝鮮の人々を苦しめるだけだ。今、私たちが採るべき方法は、朝鮮を経済的に苦境に陥れることではなく、たとえ困難であろうと、平壌宣言に則った「対話」による解決ではないのか。

 支援者の一人の言葉を、ここに記しておきたい。「アジア人に対する偏見や思い上がりがこのところ一層強くなりましたね。米国人の日本人に対する蔑視をそっくり再現する形での他国に対する見下した言動。それがなかったら、たとえば北朝鮮に対する多くの人々の態度もずいぶんと違ったものになったと思われますのに」。

 朝鮮に対して高圧的な政策を取り続けている米国でさえも、2002年には総量15万トンの食糧支援を行っており、03年12月には国務省がWFPを通じて6万トンの食糧支援を発表している。中国は毎年40万トン、韓国は昨年に30万トンの食糧支援を行っているようだ。日本は00年の60万トン以来、何も行っていない。人道支援すらも政治の手段、外交のカードとなっている。

 朝鮮では年間最低500万トンの食糧が必要であるが、昨年の穀物生産は推定で350万トンだった。WFP平壌事務所のハイダー代表は、650万人を対象に約48万トンの支援を計画しているが、14万トンしか確保の見通しが立っておらず、「このままでは今年6月以降に支援が途絶するのは避けられない」と述べている。

 隣の国、朝鮮の人々は飢えている。親たちは食べ物の調達に不安を抱いて暮らしている。私たちはそのことを良く知っている。朝鮮の子どもたちを見殺しにしても良いと言うほどに、日本人が冷酷で、醜くなっているとは決して信じたくない。まず、朝鮮の子どもたちの命を救おう。そこから懸案の問題の解決が始まる。

 NGOラブ・アンド・ピースは、5月連休に「売られる子どもたち」の支援でカンボジアに、9月に子どもたちの食糧支援で朝鮮に行く予定。協力、支援を広く募っている。募金は、郵便振替(口座名=ラブ・アンド・ピース)00140―4―364885。(藤澤房俊、NGOラブ・アンド・ピース代表)

[朝鮮新報 2004.4.5]