特定船舶入港禁止法など制裁法に反対し、朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会槙枝元文議長が談話 |
日朝平壌宣言の誠実な履行を 2000年9月、日朝首脳会談が平壌にて開かれた。この日朝首脳会談と発表された日朝平壌宣言こそが、日朝間の不幸な歴史を清算するまさしく歴史的な会談であり宣言である。日朝両政府が平壌宣言を誠実に実行に移すならば、日朝国交正常化は容易に実現可能である。 日朝平壌宣言は、過去の清算、日本による朝鮮植民地支配の謝罪と償いを基本原則としている。それが最も重要で緊急の課題である。日本政府が、国交交渉再開の前提条件としている拉致問題は、宣言のなかに明記されていない。しかし、「懸案事項」のなかに含まれることは、朝鮮民主主義人民共和国(以下共和国)の指導者・金正日総書記みずからが認めたことからも明らかである。共和国が日本人拉致の事実を認めたのは、日本が圧力をかけたから、制裁措置をとったからではない。小泉首相が直接、金総書記に対して、過去の清算に前向きに取り組むと表明したからである。この事実から、いま進められている特定船舶入港禁止法など制裁法の制定は何ら問題解決につながらないことが明らかである。 日本政府に求められているのは、制裁法を制定することではなく、また拉致問題の解決を前提条件とするのでなく、共和国と「相互尊重と対等な立場での協議という精神の下」(第2回6者協議の議長総括)、国交正常化のための政府間協議を再開することである。拉致問題については、これと平行して実務者レベルで協議すれば済むことである。日朝平壌宣言の趣旨に沿って、ただちに日朝国交交渉を再開するよう強く訴える。 過去を真しに振り返るとき 今年2月初め、日露戦争開戦100周年を向かえた。日露戦争は朝鮮半島の支配権をめぐる戦争であり、その結果、日本は朝鮮民族の外交権を奪い、植民地支配を実質的に完成させた。それから100年後のいま、南北朝鮮や中国などアジア諸国、民衆から、日本はふたたび軍事大国化し朝鮮半島の覇権をめざして戦争をしかけようとしているのではないか、と危ぐする声が広く聞かれるようになった。 また、かつて日本軍国主義は、朝鮮植民地支配の過程で、数百万人の朝鮮人を強制的に日本などに連行した。戦地へ送られた若者も多かったし、それに合わせて少なくとも20万人の朝鮮女性が兵士のための従軍慰安婦として連れ去られた。現在、日本に在住する朝鮮人、韓国人の多くは戦時中に朝鮮半島から連れて来られた人々であり、その子どもたちであり、孫たち、ひ孫たちである。 特定船舶入港禁止法案は、こうした侵略戦争や植民地支配によって甚大な被害を及ぼした朝鮮半島をはじめとする近隣諸国の人々の思いを踏みにじることになる。 「安保」を理由とした制裁法の危険性 入港禁止法案の発動要件には「わが国の平和と安全の維持のために特に必要と認められるとき」とある。改定外為法と同様に「安保」を持ち出している。 ところが、すでに国土交通省が、共和国籍船舶にねらいを定めた海洋汚染防止法案や保険未加入船入港禁止法案などを国会に上程している。にもかかわらず、なぜ別途「安保」を理由とした入港禁止法を制定しようとするのか。そもそも既存の海上保安庁法だけでも充分対応できるはずである。 安保を理由とした制裁法は、東アジアの緊張を高める元凶となり、発動を想定した相手からは宣戦布告とみなされる危険極まりない法律である。にもかかわらず、あえて「安保」を持ち出したのは、有事法制関連7法案の国会通過に道を開き、憲法9条をなし崩しにするなど「戦争のできる国」へと突き進むためではないか。 入港禁止法案は、自衛隊のイラク派兵につづいて、日本が戦争への道に踏み出すための大きな一歩にほかならない。 在日朝鮮人に対する人権侵害 入港禁止法案はまた、拉致問題や核問題の解決を意図しながら、それと直接かかわりのない在日朝鮮人を直接の適用対象としている。まったく見当違いの法案と言わざるをえない。 改定外為法につづいて入港禁止法が成立すれば、在日朝鮮人は祖国に住む家族や親族に衣料品や日用生活品、生活費などを送れなくなる恐れがある。親族訪問や修学旅行など自由往来もできなくなる。これは明らかな人権侵害である。「万景峰」号など共和国籍の船舶に狙いを定めた入港禁止法は、在日朝鮮人の基本的人権を損なうことになる。 こうした内容の入港禁止法が成立すれば、共和国バッシングにとどまらず、在日朝鮮人バッシングに法的な正当性を付与することになりかねない。98年のテポドン騒動の際、在日朝鮮人の子どもたちがチマ・チョゴリを切り裂かれるなど深刻な被害を受けた。改定外為法の制定によって、「ふたたびあの忌まわしい事件がおこるのではないか」と在日朝鮮人社会は不安感を募らせている。そこに入港禁止法案まで審議入りし制定されることになれば、心無い日本人による犯罪行為が多発することは火を見るより明らかである。 在日朝鮮人バッシングを容認する制裁法を認めるのかどうか、日本人一人ひとりの人権意識が問われている。 6者協議の合意違反 さらに、入港禁止法案などの制裁法は、国際的な合意に反している。 昨年8月に開かれた第一回6者協議では「状況を悪化させる発言や行動をとらない」と「共通認識」に明記した。今年2月末に開かれた第2回協議でも「相互尊重と対等な立場での協議という精神の下、対話を通じ、平和的に核問題を解決する」と「議長総括」に書かれている。「状況を悪化」させ、「相互尊重と対等な立場」を損なう制裁法は明らかな合意破りである。国際的に信頼を失う制裁法の制定を許すわけにはいかない。 最後に、日朝両首脳が署名した日朝平壌宣言には「双方は国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらない」とある。入港禁止法案など制裁法は、明らかに共和国の安全を脅かすことになる。日朝平壌宣言に反して、相互の信頼関係を損ない、関係を悪化させる悪法の制定は絶対に認められない。 [朝鮮新報 2004.3.25] |