top_rogo.gif (16396 bytes)

〈月刊メディア批評〉 韓国の記者たちから見た日朝関係

 東アジアの平和を目指す第2回6カ国協議が2月25日から28日まで北京で開かれた。会議の主要な課題は米国の朝鮮に対する核による威嚇と敵視政策をどうやめさせるかだ。地域から米軍を撤退させ、自主自立の共同体を作り出すことと言い換えてもいい。

 しかし、58年7カ月もの間、米軍に軍事的にも精神的にも占領されたままの日本政府と日本のメディア企業幹部には、「拉致」問題と、「北の核の脅威」しか眼中にない。

 日本のメディアは、憲法違反の自衛隊のイラク派兵と平行して、朝鮮に対する「経済制裁」策動を続けている。

 私は2月24日から28日までソウルに滞在して、韓国から日朝関係を眺めることができた。ソウルの主要新聞やテレビは、朝鮮が「核問題」などで誠実に対応していることを評価し、6者間での対話の継続を歓迎している。

 今回の韓国旅行の目的は、韓国の市民が株主になってつくったハンギョレ新聞の現状と、台頭するインターネット新聞の調査だった。取材した記者たちに、日本の対朝鮮政策について聞いてみた。

 ハンギョレ新聞のキム・ヒョスン編集局長(元東京支局長)は次のように語った。

 「拉致問題によって、より重要な日朝国交正常化が見送られているのは非常に遺憾だ。日本の革新勢力が力をなくして、日本全体が保守的な傾向になっているのに、日本の新聞がそういうことを取り上げることが少なくなっているのも遺憾だ。拉致被害者と家族の痛みは理解しているが、それと同時に、昔、日本によって強制連行された朝鮮の人たちの問題も同じように重要だ。
 日朝国交正常化ができない限りは、本当の意味で日本の過去を清算できないし、東アジアの平和と連帯も実現できない。日本の市民運動や主要報道機関が、そういうことについて積極的に扱ってほしい。インターネットで朝日、読売、毎日の主な記事を読んでいる。拉致被害者の痛みや怒りを大きく取り上げているが、戦後補償や戦争責任に関する報道が段々と少なくなっていることを心配している」

 キム局長は75年に起きた民青学連事件で逮捕され、軍事政権によって不当にも4年間投獄された骨太の記者だ。

 同紙のリュウ・チェフン外信部記者(元パリ特派員)も、「過去の問題を清算してこそ活気あふれる新しい歴史の出発ができる。そういう面で日本とドイツはよく比較される。小泉首相の靖国神社参拝にしても、日本の韓国に対する溝が大きすぎるのではないか。過去の戦争責任を整理したならば、拉致問題は今のよう大きな問題にはならないだろう。安全保障の問題でも、日本の方が韓国より強い過剰反応を見せている。おそらく日本の右翼政治家の一連の動きと関連があると思う。ミサイル攻撃という、起きるかどうかが分からない極端な事態を、現実問題としてとらえている日本は異常だ」と語った。

 01年に誕生した知識人向けのインターネット新聞「プレシアン」のパク・インギュ代表の見解は次のようだった。

 「朝鮮からの戦争の脅威とか、拉致問題は、明らかに日本の右翼の政略的な利用である。小泉首相が「私たちは国益のために、米国と仲良くしなければならない。北朝鮮が侵略してくるときに、我々を助けてくれるのは米国しかない」というのが小泉政権の考えらしいが、ばかばかしい。北が侵攻してくるということを信じるということ自体がおかしい。
 韓国では2000年の首脳会談後、北を脅威と感じる人はほとんどいなくなった。経済交流、人的交流が進んでいるからだ。
 拉致問題は、日本で、日朝問題のすべてになっている。小泉首相が平壌を訪問したときの気持ちを思い出してほしい。すべては、日本が過去の問題を清算してからだ」

 市民運動「参与連帯」のリ・テホ政策室長はこう述べた。

 「拉致問題で、日本は久しぶりに犯罪者ではなく犯罪被害者になることができたと感じている。これによって普通の国としてやっていけると思っている。日本の軍国主義の台頭を懸念している。
 日本政府が行おうとしている経済制裁は適切な手段ではない。拉致問題は外交手段で解決すべきであり、拉致だけではなく日本の過去の補償問題も残っている。政府が世論を悪い方向に持っていくのは不当である。軍事的な対応は効果的ではない。北朝鮮に誠実かつ友好的に接する金大中大統領がとった包容政策を高く評価している」と語った。

 リ氏は、350団体で作る「イラク派兵反対国民運動」の有力メンバーでもある。日本の自衛隊イラク派兵については、「歴史上、最も大儀のない『戦争』への派兵は許されない。特に、日本が自衛隊の海外派兵を禁止していた憲法の規定を覆して派兵を行ったのは問題だ。国際社会と日本の市民社会が日本の派兵を止められなかったのが残念だ」と批判した。

 韓国の民衆が朝鮮に対する情緒的な反感を克服した背景には、真実を伝え、社会を啓蒙する真摯なジャーナリストたちの努力があった。

 ソウルではNHKの衛星テレビとインターネットで日本の主要紙の記事を読むことができたが、相も変わらず、朝鮮を特殊な国家と決め付けて、「拉致問題の解決なくして正常化はない」と絶叫している。日本のメディア企業に依存していると、世界が見えなくなると改めて思った。(浅野健一、同志社大学教授)

[朝鮮新報 2004.3.10]