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京都学生シンポジウム結交通信使 from KYOTOに300人の学生、市民ら参加

 日本と朝鮮半島の友好を考える京都学生シンポジウム結交通信使(ゆうこうメッセンジャー)from KYOTO(主催=同実行委員会)が21、22の両日、京都大学で行われ、同胞と日本人学生、南朝鮮留学生、一般参加者、関係者ら約300人が参加した。2日間にわたって基調講演、シンポジウム、分科会、記念講演会など盛りだくさんの企画で行われた同シンポジウムは、朝鮮半島と日本の「真の友好関係構築」のために在日コリアンと日本人学生が共同で企画した。2002年の「9.17」以降、最悪の朝・日関係を友好関係に転換していくために、歴史認識を共有することの大切さを確認し合った。1日目の夜には交流レセプションや討論会が行われ、参加した学生らは互いの意見をぶつけ合いながら楽しいひとときを過ごした。(千貴裕記者)

朝鮮通信使からひもとく

300人が参加したシンポジウム

 シンポジウム初日の21日には、まず、「日朝友好の関係史を見直す〜朝鮮通信使の意義」と題して仲尾宏京都造形芸術大学客員教授が基調講演を行った。

 仲尾氏は、徳川幕府の時代の1607年から1811年までの12回にわたる朝鮮通信使の来聘は、少なくとも朝鮮に開国を強要する契機となった江華島事件の1875年までの間、日朝および東アジアの「不戦のかけ橋」だったと指摘。豊臣秀吉の朝鮮侵略に対する謝罪の国書が届けられるなど対等な関係が続き、互いの文化を尊重し、同じ東アジアの一員としてともに歩んできた過去を顧みると、国交正常化が何よりも必要であるなどと語った。

 そして北南関係がますます和解へと進み、統一された朝鮮と日本が対等な関係を結び、文化交流も盛んになることが東アジアの未来を保障すると強調した。

 つづいて行われたシンポジウム「日朝関係100年の検証」では、水野直樹京都大学教授が「植民地支配の歴史を振り返る」観点から、田中宏龍谷大学教授が「日本の戦後補償の検証」の観点から、高橋哲哉東京大学教授が「戦争責任とは何か」という観点からそれぞれ報告した。

 その後、「若者に戦争責任はあるのか」(高橋教授)、「植民地支配とは何か」(駒込武、京都大学助教授)、「ナショナリズムあるいは一国主義を超える歴史教材づくりへ」(大越愛子、近畿大学教授)、「日本における外国人(民族)教育はどうあるべきか」(金東鶴、在日本朝鮮人人権協会部長)、「東アジアの平和をどう実現するのか」パート1(嚴敞俊、立命館大学講師)、パート2(浅野健一、同志社大学教授)の6つのテーマ別に分科会が行われた。

東アジアの平和に貢献

朝・日友好の想いを書き込む大学生たち

 2日目の22日には、高麗美術館と耳塚の2つのコースに分かれてフィールドワークが行われた。

 その後、錦繍文庫顧問の朴鐘鳴氏による記念講演会「日朝関係2000年と未来への展望」が行われた。

 朴氏は、朝鮮半島と日本が絶えずいがみあってきたような印象が強烈だが、2000年の歴史をひもとけば、平和的で善隣友好的な関係が1600年もあったのに比べ、不幸な関係は100年にも満たないと指摘。不幸な関係を互いが認識し合うと同時に、長年にわたり平和的かつ友好的な関わりがあり、それが両国民にどれだけすばらしい影響を与えたのかを考えることが重要だと述べた。そして、現時代に生きるわれわれがこの関わりの歴史を生かしていけば、大きな広がりと規模の中で歴史を共有できると述べた。

 伊東暢彦さん(一橋大学4年)は、「これだけの大学生が集まった集会に出るのは初めてでとても驚いている。日朝友好のためには歴史問題を継続して追求しなければならない。民族学校の受験資格問題などは戦前、戦後にかけてさまざまな形で積み重なってきた植民地主義的な考えが日本社会全般に根づき、それが根底にあると思う。見えてくるのもたくさんあるし、それに応えてこそよりよい社会を築くことができる」と語った。

 鄭祐宗さん(立命館大学3年)は、「朝鮮通信使を起点にした発想がおもしろかった。在日コリアンと日本人学生との取り組みは始まったばかり。今回は学生参加型のシンポという側面が薄かったのが残念だが、今後こういう集いを続けていく素地になったと思う」と話した。

共に行動起こすのが大切

 今回のシンポを主催した実行委の母体となったのが、02年の10月に設立された日朝友好京都学生の会だ。@日朝国交正常化の気運高揚、A在日同胞の権利擁護、B民族教育―が主な活動目的。ニューイヤーパーティー(03年、130人参加)や学習会、朝鮮学校見学会などを企画し、対話と交流を通じて在日と日本人の学生が相互理解を深め友好の輪を築いてきた。

 昨年10月にシンポジウム実行委を結成。朝・日平壌宣言発表以降「拉致問題」のみが大きく取り扱われ、同宣言の意図とは異なり両国の関係が憎悪と敵対心に満ちていく中で、いま一度、過去の善隣友好の歴史から学び、日本の植民地支配という20世紀の不幸な出来事を重く受け止める必要性があると考えた。そういった観点から、朝鮮半島と日本の「真の友好関係構築」「信義を交す」関係への転換、多文化社会の実現と北東アジア地域の平和と安定、ひいては世界の平和と安定に貢献する行動を「学生の町、京都」から起こしていこうと企画した。

 同実行委共同委員長の浅野裕二さん(京都大学4年、学生の会共同会長)は、「教授の方々や関係者など多くの人たちの助けがあったことに感謝したい。この出会いを出発にし友好の場をさらに広げていきたい」と述べた。

 同じく実行委共同委員長の許武泰さん(同志社大学4年、学生の会共同会長)は、「(朝・日関係を憂慮する)これだけ多くの学生がいることを確認できた。互いの立場は違っても一緒に行動を起こすことの重要性を感じたことが大きな収穫だった」と語った。

[朝鮮新報 2004.2.26]