日本の対朝鮮経済制裁、外為法改正案は米の戦争戦略の一環 |
1月29日、衆院本会議で可決された外為法改正案。カネ、モノ、ヒト(特定船舶=万景峰92号の日本入港、在日同胞の祖国訪問)を止めるという3点セットになった日本当局の不当な朝鮮経済制裁のカネの部分に当たる。「拉致」問題解決に向けた「対話と圧力」政策の「圧力」を具体化したものだと自民党関係者(安倍幹事長)らは説明しているが、そんなに根の浅い単純なものではない。ソ連崩壊後、米国が朝鮮を軍事力によって崩壊させようと立案、策定した秘密作戦計画「5027」の一部分として、米国と一体になって10年も前から計画されてきたものなのだ。 第1次核危機の「5027」 すでに広く報じられてきたように、1993〜94年の第1次朝鮮核危機の際、当時のクリントン政権は原子力施設が集中している平安北道寧辺一帯に対する空爆を皮切りに朝鮮との戦争を敢行しようとした。 しかし、目前の94年5月に国防長官、統合参謀本部議長や世界各地の司令部要員たちが参加した軍事会議で空母、戦闘機の配置転換、兵員、物資、兵たん支援の手はずなどに加えて、実際の戦闘での被害などをシュミレーションした結果、最初の90日間で米軍に5万2000人、南朝鮮軍に49万人の死傷者が出ることが判明した。 とうてい米国内世論の支持を得られないと判断したクリントン政権は、同月20日に戦争方針を撤回、対話による解決策へと向かった。翌6月にカーター元大統領が訪朝、 1800項目の支援要請 当時、南朝鮮の国防長官が国会国防委員会で公表(94年3月)した「5027」の概要は、次のようなものである。 第1段階(戦争直前)=米本土などから南朝鮮に米軍部隊増援。 この作戦には、米軍だけで陸軍5個師団、海兵隊2個師団など69万人、軍用機1600機、艦船160隻が投入されることになっていた。 そして、クリントン政権は「5027」の実施(対朝鮮攻撃)に際して、日本に海上封鎖、自衛隊の攻撃への参加とともに朝・日間の人的物的往来阻止、総聯規制、弾圧など1800項目にわたる「支援」を要請した。それを受けて日本は「K(コリア)半島事態対処計画」というものを立案した。この計画は当時、極秘にされ98年になってようやく存在が暴露された。 経済制裁と自衛隊参戦 「K半島事態対処計画」は、主に経済制裁と自衛隊の行動の2点からなり、まとめると以下のようになる。 [経済制裁]@日朝貿易の取引禁止、A人事往来および朝鮮船舶の日本入港禁止、B朝鮮への送金ルートの断絶、C日朝間の電信、電話など通信手段の規制。 このように今回、衆院を通過した外為法改正案は、その要綱を作成した自民党の山本議員らのグループや安倍幹事長らの言うような「拉致問題解決」のための「対話と圧力」政策の一環というレベルの生易しいものではない。米国の軍事戦略下、朝鮮との戦争に備えたものなのである。 総聯大阪、京都府本部弾圧 それを物語るように、今回の改正案は「拉致事件」が明るみに出た2002年9月以降に準備されてきたものではない。90年代後半から、安倍、山本議員らの間で着々と進められ、すでにその主旨は月刊誌上で公表もされている。 一方、94年当時、すでに実際に行動に移されたものもあった。「威力業務妨害」などを口実にした大阪(4月)、京都(6月)府本部など、数千人の機動隊を動員した総聯に対する弾圧である。 また、警視庁、大阪府警なども93年12月に警察庁の指示の下に「北朝鮮への不正送金対策推進計画」なるものを立て、「外事、風俗担当課、捜査第2課から精鋭を厳選し三者による合同対策チームを設置」。「朝鮮総聯系パチンコ業者等の大物商工人を重点に事件化を図」るため、国税庁との緊密な連携を通じた作業に着手していた。 「事件化」のための「要領」は「朝鮮総聯系パチンコ業者一覧表の作成」から始まり、「対象の第一次絞込み―北朝鮮(朝鮮総聯)への貢献実態、訪朝、(「万景峰」号など)訪船歴、土台(家族状況や親族帰国者の有無)性、収入、資産等に着目」、そして「内偵」を経て「対象の第二次絞込み」「入口事件の着手」など9項目にも及んでいる。 同盟軍参戦の意志表示 「5027」は現在、戦争ができなかったという94年当時の教訓を踏まえて「5027−03」という内容に深化、改編されている。つまり@大規模戦闘を回避=米軍死傷者を極力出さず、また米軍ではなく南朝鮮軍を前面に配置、「同族戦闘」を前提にする、A原子力、ミサイル施設への限定的攻撃、B北の火力重視、特殊部隊作戦に対処して小型戦術核の使用(火力破壊)、特殊部隊壊滅のための先制攻撃、などの3つが柱となっているという(「国防長官が命じた『対北朝鮮新戦略』」月刊現代2003年5月号)。 そしてブッシュ政権は「イラクと共に朝鮮、イランは悪の枢軸」(2002年1月の大統領年頭教書)と呼び、「(悪の枢軸との戦いにおいて)単独での行動もためらわず、先制的な行動で自衛権を行使する」(「米国の国家安全保障戦略」=ブッシュ・ドクトリン。2002年9月)を採択。その最初の餌食として昨年3月、イラクに侵攻した。 そのイラクへの自衛隊派兵、そして今回の外為法改正、改悪は同盟軍として米国の戦争に参戦していくとの意志表示に他ならない。(厳正彦記者) [朝鮮新報 2004.2.2] |