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そこが知りたいQ&A−実質的な「審議」もなく外為法改正案が衆院可決されたが

 Q 外国為替及び外国貿易法(以下外為法)改正案が1月29日、衆院本会議で可決されたが。

 A 同改正案は、自民党の「対北朝鮮外交カードを考える会」のメンバーが、朝鮮に対する経済制裁発動を目論み議員立法としてまとめたもので、自民、民主、公明の3党が共同提案していた。早ければ5日にも参議院で審議、採決し成立する見込みだ。

 実質的な「審議なしのスピード可決」「北朝鮮への単独経済制裁」を主眼にした法改定への疑念、「制裁発動」への危惧等々、問題点が尽きない。

 外為法とは、外国との貿易や資本取引、役務(技術供与などが含まれる)などを規制、管理する基本法。今回の改正案は一言で、日本政府が単独で経済制裁を発動できるよう同法の該当条項を補充、追加したものだ。

 すなわち、目的を明示した条項と、主務大臣(財務大臣や経済産業大臣)から許可を受けなければならない条項すべてに、「我が国(日本)又は国際社会の平和及び安全の維持」という要件を新しく付け加えることで、日本の「平和及び安全の維持を妨げる事態が生じた場合」には、主務大臣の「許可制」に移行しようとするものだ。

 Q 改正案の目的は。

 A 一言で、朝鮮に「経済制裁」という「圧力」をかけるためのものだ。

 朝鮮中央通信1月28日付は、国連憲章と国際法を踏みにじり、朝鮮を経済的に窒息させようとする日本国会での法制化の動きに対して、朝・日平壌宣言に背くものであり、これに「超強硬」で対処すると厳しい警告を発している。

 改正案では「純粋な経済問題」が目的であるかのように述べられているが、実際には朝・日間のカネとモノの流れを完全に止めようという政治的目論見から出たものだ。

 つまり、今回の外為法改正案は、その前段階として朝・日間の支払いと資本取引、つまり送金を含むカネの移動や輸出への規制強化を狙ったものといえる。

 Q 同法の本質は何か。

 A まず言えるのは、日本が国際的合意なしに特定の国を対象に、つまり朝鮮に対して単独で経済制裁を発動できるようにしたことだ。

 これまでの外為法では、外国への送金措置や貿易規制といった経済制裁を実施する場合、「国際平和のための国際的努力に寄与するために特別に必要だと判断した時」と規定してきた。そのため、国連安保理の制裁決議や多国間の国際的合意なしには経済制裁に踏み切ることはできなかった。歯止めがあったわけだ。しかし改正案はこの歯止めを取り払い、日本が必要だと思った時に発動できるようにした。

 次に、対朝鮮経済制裁の全面的実施への道を開こうとするところにある。

 日本当局はすでに、「国際的輸出管理体系の履行」という口実のもと、02年4月から「キャッチオール規制」(輸出品目の他、それに付随しているものすべてを事前にチェックするというもの)を全面実施した。それに加えて今回、カネの流れを規制しようとしているわけだ。こうした日本の動きについて、南の新聞は「韓半島の安定と北・日関係を害し、決して国益とも合致しないという事実を冷静に認識すべきである。いまは協商すべき段階である」(京郷新聞1月26日インターネット版)と指摘している。

 Q 法の施行による在日同胞への影響は。

 A 法の施行によって、朝鮮との経済交流および貿易はより規制強化され、家族親族への送金も大きく制限されるのはまちがいない。また、経済制裁が発効された場合は貿易および送金は全面的に停止される。

 より重要なことは主務大臣、つまり日本当局による許可制に移ったことで、政治的な思惑だけが先行する恐れもある。朝鮮との貿易に携わる同胞や日本の業者にとっては、「規制」でがんじがらめになり、生活面でも多大な悪影響が及ぶものと考えられる。

 一方、「万景峰92」号など朝鮮の船舶を想定した「特定外国船舶入港禁止法案」や、安全保障上の理由で永住外国人の再入国を禁じることができる「再入国禁止法案」など、在日同胞の人権をじゅうりんする法案も準備されている。

 こうした朝鮮や在日同胞に関する制裁や規制は、朝・日の親善、国交樹立を願う世論に真っ向から逆行するもので、朝・日平壌宣言の精神に反する。さらに、有事法制や自衛隊のイラク派兵など日本が「戦争をできる普通の国」になるための地ならしの一環なのである。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2004.2.2]