〈朝鮮の視点で世界を読む〉 「先軍」は20世紀の朝鮮史の総括 |
戦争と侵略の世紀と言われた20世紀。アジアの多くの国々が列強の侵略を受け、夥しい数の人々が殺され、追われ、難民となって受難の生を強いられた。 その過酷な20世紀の記憶と血であがなった抵抗の歴史を民族の背骨に刻みつけた朝鮮民族が、祖国の運命こそ、わが運命であり、民族の隆盛こそ、自分の幸福に直結するという価値観で結ばれているのは、何ら不思議なことではない。 日本による血塗られた植民地統治によって蹂躙された祖国を取り戻すために朝鮮民族が立ち上がった1919年の3.1独立運動。朝鮮全土が日本の監獄と化し、銃剣の林に覆われながらも、人びとは激しく抵抗し、血を流し、生命を捧げ、「朝鮮独立万歳」の声を叫び続けた。 3.1運動のことを幼い金日成主席は父の金亨稷先生からこう聞かされたという。 「強盗が家に押し入って刀を振り回しているのに、いくら大声で命乞いをしても、強盗が聞き入れてくれるはずがない。家の外にいる者も強盗だとしたら、叫び声を聞いても駆けつけてきて助けてくれはしないだろう。殺されないためには自力で強盗とたたかわなければならない。刀を持った者とは刀を持ってたたかわずには勝つことができない」(「金日成回顧録第1巻」) この回想の中に朝鮮近代史の悲運の中で、祖国と人民の運命を救うために強敵に対して武器を持って立ち上がった民族の心が表現されている。 朝鮮民主主義人民共和国から日本語で出版された2冊のパンフ「金正日先軍政治」「アメリカの朝鮮戦争勃発の歴史歪曲策動」にもまた、この暗い悲劇に見舞われた朝鮮近代史の教訓にもとづいて、2度と再び外勢に祖国を蹂躙させてはならぬという朝鮮の指導者と人びとの確固不動の決意が力強く打ち出されている。 20世紀の植民地転落の歴史に真摯に向き合う時、1894年、清日戦争に先立つ朝鮮王宮占領事件によって、わずか3時間で、国家の中枢が日本軍の手に落ちた事実に目を背けることはできない。それから約11年後、1905年の保護条約によって外交権を奪われ、10年、完全に植民地となった。その後今日までの約100年、朝鮮民族は筆舌に尽くし難い過酷な歩みを強いられてきたのだ。 つまり、朝鮮の先軍政治とは、この歴史、この悲劇の教訓によって生み出された祖国防衛思想のことである。国家の自主権と民族の尊厳を守ろうとする全民族の気概が、ここに貫徹されているのだ。 現在、朝鮮はブッシュの核先制攻撃の的にさらされている。枯葉剤、劣化ウラン弾、原爆並の超大型爆弾がためらいもなく使用されたイラク侵略戦争の残虐性を見るにつけ、朝鮮の「先軍政治」の必然性を理解することができよう。 相手を正しく知ることが外交の第一歩であり、善隣友好の基本である。本書は、正しい朝鮮像を説得力をもって語ってくれる。そして、94年の朝米交渉以来の積み重ね、そしてその結果、平和的方法で朝米関係を解決すべきだとする「ペリー報告書」の発表までの手に汗握る手強い交渉プロセスも収録されている。できれば2冊を一緒に読むことを勧めたい。(朴日粉記者) [朝鮮新報 2004.1.21] |