山口のオモニ代表ら要望書、1万7千人分の署名、文部科学大臣に提出 |
「山口県民族教育を支えるオモニたちのネットワーク」(金美鐘代表)の代表ら6人が16日、東京都千代田区の衆議院第2議員会館を訪れ、河村建夫・文部科学大臣に「国連勧告を尊重し、外国人学校、生徒への処遇改善を求める要望書」と朝鮮学校の処遇改善を求める署名1万7161人分を提出した。5月22日に訪朝した小泉首相は金正日総書記に対し、「在日朝鮮人の方々に対して、差別などが行われないよう、友好的に対応する考え」を表明。総聯第20回全体大会に自民党総裁として送ったメッセージにも同様の内容が盛り込まれた。文科大臣との面談は、その後初めての動きとして注目される。同ネットワークではこれを機に、県知事、県議会への要請、県の弁護士連合会などに協力を求める方針だ。 助成金増額など要請
要望書は、▼民族教育の差別の起因となっている65年文部事務次官通達の撤回▼教育助成金を私立学校水準並みに引き上げる▼朝鮮学校の寄付金に対し、国、私立学校の寄付金と同じ税制上の優遇措置、指定寄付金制度を適用する、などを要求している。 同ネットワーク役員の高貞姫さん(50、女性同盟山口県本部副委員長)は、「今年1月、子どもの権利条約委員会が日本の政府に、在日朝鮮人ら少数者に対する差別改善を勧告したのをきっかけに、朝鮮学校に子どもを送るオモニたちが中心になって署名運動を行ってきた」と、河村大臣に経緯を説明した。 下関初中オモニ会の李長海会長(47)は、「最近では朝鮮学校の公開授業にも多くの日本人が訪れ、激励の言葉をくれている。1世の同胞らが守ってきた朝鮮学校で学ぶ生徒たちにもっといい環境を作らなければという一心で活動してきた」と涙ながらに訴えた。 席上、河村大臣は「朝鮮学校に対する一連の問題は、日本と朝鮮に国交がない事が一つの障害となっている。一日も早い国交正常化が求められる。学校教育法の1条校に準ずる地位を保障する問題もしっかり検討していきたい」と語った。 役員の一人である総聯県本部の金静媛国際部長(44)は、国立大学受験資格拡大の過程に言及しながら、「民族教育が始まった歴史的経緯、植民地被害者の子孫たちが民族のアイデンティティーを守りながら朝鮮学校に通っている事を理解し、民族教育権利の全般についてよく考えてほしい」と求めた。 宇部初中オモニ会役員の鄭春美さん(30)は要請を終え、「日本の人たちは民族教育の問題についてほとんど知らないと思う。署名運動を通じて朝鮮学校の現状を少しでも知ってもらえた事の意義は大きい」と述べた。 県知事、県議会にも 山口県での今回の一連の動きは、1月にジュネーブで開かれた国連「子どもの権利条約」委員会に金国際部長が代表の一人として参加したのがきっかけとなった。 委員会は日本政府に@「大学受験資格問題」を念頭に置き、「高校を卒業したすべての生徒が高等教育機関にアクセスできる」措置を取ることA朝鮮学校の生徒たちに向けられた暴言、暴行事件を憂慮しながら、「社会的差別と闘い、あらゆる必要な積極的措置」を取ることB助成金、税制上の優遇措置にもつながる「…自己の文化を享受し、自己の宗教を表明し、かつ自己の言語を使用する機会を拡大する」措置を講ずること―という3つの是正勧告を行った。 勧告を踏まえ、子どもたちを朝鮮学校に送るオモニ、朝青員らは山口県立大学と山口大学の学生らと共に、山口市と下関市で1カ月半にわたって署名運動を行った。 また、「山口県民族教育を支えるオモニたちのネットワーク準備会」代表らは、3月に県庁を訪れ「国連勧告を尊重し、外国人学校、生徒への処遇改善を求める」意見書を提出。山口県議会が全国で初めて同意見書を採択し、今回の要望書を提出するに至った。 金国際部長は、「今後、県知事に要望書を提出し、県議会にも助成金増額のための運動を行っていく。また、弁護士連合会県本部会長の声明をもらい、弁護士会からも勧告を得る活動を進めていきたい」と語っていた。(金明c記者) [朝鮮新報 2004.6.19] |