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法科大学院に合格した朝鮮大学校法律学科1期生2人の抱負

 朝鮮大学校(東京都小平市)政治経済学部に法律学科が創設されたのは99年。5年目を迎えた今年、1期生の金敏寛さん(23)と「明玉さん(23)が法科大学院(ロースクール)に合格した。金さんは、成蹊大学大学院と島根大学大学院2年コースに合格。どちらに入るかは現在検討中だ。「さんは南山大学大学院、都下の法科大学大学院2校に合格したが、海外のロースクールとも交流関係を持つ南山大学大学院の3年コースに進むことを決めた。高い倍率の狭き門を突破した2人の合格により、朝大卒業生の弁護士誕生が現実のものになろうとしている。2人に今後の抱負を聞いた。(金明c記者)

北南の法律も学びたい

 東北朝鮮初中高級学校(宮城県仙台市)高級部在学中から、法律に関する勉強をしたいという気持ちが強かった。当初は、日本の大学の法学部に入ろうと思っていた。そんな矢先、朝大に法律学科が設立されるという話を聞いた。

 「同胞のために力を尽くせる法律家になりたい」。そのためには同胞のネットワークが必要だと思い、迷わず朝大で法律を学ぶ事を決めた。

 「朝鮮学校生徒たちへの暴行、暴言やチマ・チョゴリ切りさき事件、不十分な民族教育権利など、在日朝鮮人が堂々と暮らしていける条件にないと言っても過言ではない日本社会。在日朝鮮人の法的地位は確立されておらず、それを明確にしなければいけない」

 朝大在学中は、人権協会の学生会員として学習会やシンポジウムに参加する傍ら、連続セミナー事務局や通訳などボランティアスタッフとしても活動してきた。同胞らが抱える国籍や国際結婚、相続問題など、今は各地の同胞生活相談綜合センターが対応しているが、今後はもっとたくさんの同胞法律家らも加わり解決していければいいと話す。

 「同胞たちの生活権利、民族教育権の拡大などは、朝大出身者らが積極的に取り組んでいくべきだと思う。国籍問題では北南間で法律紛争がおきており、在日コリアン社会はこれからもっと複雑になっていくはず。日本の法律はもとより、北南の法律のエキスパートになって、同胞社会はもちろん、日本社会にも貢献したい」

 朝大では、専門以外にもさまざまな事を学んだが、「それがとても強みになっている」と話す「さん。「大学院ではいろんな日本の人たちと連携を持ち、彼らが『在日』にもっと関心がいくようにどんどんアピールしていきたい」。(「明玉さん)

「積極的に同胞の権利守る」

 「本当は理工学部に入ろうと思っていたんですよ」。ところが、九州朝鮮高級学校(福岡県北九州市)3年時、修学旅行で朝鮮を訪問した時に体験した事がきっかけで、法律学科に進むことを決めた。

 それは、朝鮮での代議員選挙の時。同級生のほとんどが投票に参加したが、金さんを含め数人だけが投票できなかった。理由を聞くと、「韓国」籍だったためだ。

 「『在日』の国籍ってどうなってるんだろう」

 素朴な疑問を抱き始めた時、それはすでに「知りたい」という好奇心に変わっていたという。朝大在学中は、国籍や民族結婚、離婚問題などを巡る法的問題の研究に没頭。卒業式では論文賞を受賞した。

 今回、金さんは2年コースに進むため、朝大卒業生としては初めて新司法試験を受けることになる。

 「在学中に朝鮮大学校の経験豊かな先生や日本の法学界で著名な先生たちに学ぶことで、将来、同胞弁護士となるにふさわしい資質と能力を備えることができた。法科大学院合格はその客観的な評価だと思う」

 在日同胞の権利状況を見るにつけ、法的地位向上や、民族教育保障の完全な権利を得るための活動に積極的に関わっていかなければと考える。

 「だから、同胞たちの権利を守る朝大卒の弁護士が切実に求められている。大学院では高い水準の法的な思考力や解決能力、応用力など法律家として必要な知識をしっかり学び、優秀な弁護士を目指したい」

 将来は、各地の同胞生活相談綜合センターのような同胞のためのセンターを構え、地元福岡で活動してみたいという。

 「今回の合格で、弁護士を目指す学生が法律学科にたくさん来てくれればうれしいですね」(金敏寛さん)

法科大学院とは?

 欧米に比べて極端に少ない日本の法曹人口。質の高い法律家を数多く育て、法曹人口を増やそうという目的で設置された。従来の、研究者養成を目的とした修士課程とは大きく異なり、弁護士などの法曹者養成に特化した教育を行う。コースは3年制と2年制からなり、コース履修者は法務博士となる。2004年から68校が開校する。

 新たな制度の開始とあって、大学入試センター適性試験の受験資格がどうなるかが関心事となっていた。今回の2人の合格で、朝大卒業生が法科大学院適性試験をストレートに受け、各法科大学院を受験することが可能であることが明確になった。今後、現行司法試験のみならず、新司法試験を経た朝大卒業生の弁護士誕生に道筋が立ったことになる。

 現行の司法試験は2010年まで継続される。

 11年以降は、法科大学院を経ずに司法試験を志望する者を対象にした予備試験が行われ、それに合格した者が新司法試験を受験することになる。

 新司法試験は2006年から実施される。今年、法科大学院に入学した2年コースの者がその最初の試験対象者になる。合格後は1年間の修習期間を経て、弁護士となる。不合格者は、法科大学院卒業後、5年間のうちに3回までの受験が認められている。

 現行試験の合格者枠は約1000人。2006年には現行試験と新司法試験の合格者の枠は約1500人、2010年には約3000人に増員されることが決まっており、弁護士への道が大きく広がった。

[朝鮮新報 2004.3.27]