〈朝高卒の資格で初めて国立大学合格者〉 京都大学医学部に合格した黄輝広さん |
朝高卒の資格による初めての国立大学合格者が誕生した。京都朝鮮中高級学校の卒業生、黄輝広さん(19)で、京都大学医学部に合格した(9日、前期入試の合格発表)。文部科学省はこれまで「各種学校」として排除してきた朝鮮学校出身者に対し、今春から大学側の個別判断で受験資格を認める方針に転換した。黄さんは大学検定試験による受験資格も持っていたが、あえて朝高卒の資格で受験し、見事合格した。
黄輝広さんは3人兄弟のまん中。兄は大阪工業大学機械工学部、妹は京都中高級学校に通っている。 医師になりたいと思ったのは高級部1年の終わり頃。「ケガや病に苦しんでいる人々を助ける仕事に携りたい」と志望を医学部に決め準備を進めてきた。 朝高卒の資格で受験したことについて黄さんは、「私はあくまで朝高出身者。自分が通ってきたウリハッキョにプライドがある」と話す。 「私の合格がきっかけで、今後(朝鮮学校出身者に対する受験資格を求める)運動が広がってほしいし、また後輩たちの励みになったとすれば幸いだ」 「家族、朝高の恩師、同級生、運動に携った多くの人たちの支えがあり、それがいい意味でプレッシャーになった。今後は勉学に励み、同胞や日本の人たちに信頼されるりっぱな医者になりたい」と抱負を語った。 オモニの車香連さん(46)は、「息子のがんばりを傍らで見ながら、ただ祈る気持ちだった。今までも多くの朝鮮学校出身者が京大に合格しているのに、こんなに注目を受けたのは初めて。あらためて多くの人たちに支えられてきたと実感している。運動に携ってきたすべての人たちに対する感謝の気持ちでいっぱいです」と述べた。 解説:朝鮮学校は、日本の教育法上「各種学校」として扱われているため、今まで国立大学などの受験資格を与えられなかった。 しかし、学父母や学校関係者、日本の大学関係者や市民らの粘り強い運動により、近年では、ほとんどの私立大学が受験資格を認めている。朝鮮学校卒業生たちは日本の「1条校」と同等の学力を有しているとの判断からだ。 しかし、国立大は文科省の方針に従い、受験資格を認めてこなかった。国立大に通う朝鮮学校卒業生たちは、在学中に日本の通信高校に通い資格をとるか、大検の資格で入学願書を申請するという2重、3重の苦労を課せられた。 昨年2月、国立大学の受験問題と関連して文科省はインターナショナルスクールなど欧米系の学校だけに受験資格を認めると発表。アジア系の外国人学校を排除し、差別をさらに助長した。 これを受け、学父母をはじめとする同胞、朝鮮学校を支援する日本市民らが署名活動や要請活動などを精力的に展開。文科省は発表を取り消さざるをえない状況に追い込まれた。 しかし、同省は昨年9月、新たに改正した法令で、一部の外国人学校卒業生たちには学校単位で入試資格を認定する一方、朝鮮学校に関しては、「本国の教育課程に準じていると確認することが難しい」との「理由」で資格を各大学の個別審査に委ねることを決定。露骨な「朝鮮学校はずし」を行った。 03年10月3日現在で国立大83校中、朝鮮学校卒業生に入学資格認定書を交付すると決めた大学は全体の39%にあたる32校。認定、または認定の方向でなんらかの連絡があった大学も32校にのぼった。全体で77%の国立大が朝鮮学校生徒に資格認定を与える方針を打ち出した。 しかし、9月の改正により韓国学校や中華学校の生徒が自動認定を受けたのに対し、朝鮮学校生徒は大学側の個別判断によって受験資格が与えられるため、学力がありながらもさまざまな障害にぶつかっている。 今年東京朝高を卒業した金翔一さんは、東京工業大学工学部に合格したが、同校が朝鮮学校出身者を「認定」していないため、大検の資格で受験に臨まざるをえなかった。 また、自動認定を受けていない朝鮮学校卒業の資格で受験資格を申請する際にも、数々の手間がかかる。 大阪朝高卒業生で京大工学部に合格した高悠史さんは、受験直前に不必要な手間がかかるという理由から仕方なく大検の資格で申請した。 今回、黄さんは、朝高卒の初の合格者となったが、文科省が朝鮮学校自体を認めない限り同校出身の受験者に課せられるさまざまな負担はなくなることはない。 在日コリアンが日本に定住する歴史的経緯、国連人権小委員会や日弁連の勧告書の見地からも、朝高卒業生への差別は是正されるべきだ。(千貴裕記者) [朝鮮新報 2004.3.22] |