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〈03年度教育研究集会東日本地域集会〉 現場教員の経験から

 03年度教育研究集会が1月24日、東日本、東海・北信、近畿、中四国・九州の4地域ブロックで行われた。03年からスタートした新カリキュラム、新教科書、「週5日制」に焦点を置いた316編の論文が発表された。東日本の集会では、教員たちが今後、教案や資料をインターネットで利用できる会員制の「e-MILEネット」開設に関する説明があった。また、生徒たちに民族性を育み世界的に通用する人材を育成するための研究、教員たちのスキル向上のための提言など活発な意見交換が行われた。新カリキュラムスタート、新教科書導入後の現場教員たちの経験について東日本集会から見た。(金明c記者)

初級部国語分科

 初級部国語分科では、03年度から改編された新教科書とカリキュラムに伴った研究論文が発表された。その内容に共通するのは「口語教育強化」。

 口語教育を強化し、豊富な言語知識と豊かな民族性を育む内容となった新教科書に沿って、「聞き、話す口語教育をどのような方法で効果的に行うか」に研究の焦点が当てられた。

 東京学区制(東京、千葉、埼玉の朝鮮学校)初1分科が作成した論文は、初級部1年生を対象に、「聞き、話す」教育を先行させるための研究結果を発表。今回、東京学区制管下の1学年担当教員ら全員が、新教科書と教授要綱の意図を正確に把握しそれをどのように活用すべきか、その内容と方法を研究してきた。

 発表を行った埼玉初中の邵己淑教員は、初級部1年では年齢、心理的特性に合わせて楽しくウリマルを学べるとして、今年度に作成した「教授計画資料集」を一般化し教授法で統一性を持たせた点について指摘。「学友書房」のビデオを活用して見て聞いて学ぶ方法、歌や遊びを通して学び、親子で発表する場を設けることで児童、保護者たちが関心を持ち、自然に楽しく身につくようになった経験について述べた。

 また、鶴見初級の朴香織教員は授業に「なぞなぞ」を取り入れ、聞き、話す教育を実践した経験を発表した。新たな方法論を探すため、日頃から生徒たちが何に興味を持っているのかを観察するなどしてヒントを得たという。新しい単語を「なぞなぞ」形式で出題することで生徒たちが興味を持ち、日常生活の中で自然にウリマルを話せるようになった経験を述べた。

 基調報告を行った李龍浩分科長(東京第1初中教員)は、「生徒たちの聞き、話す機能を伸ばすための教材研究が活発に行われたと思う。新教科書とカリキュラムの研究をこれからも続け、理論と経験を蓄積することが重要だ」と述べていた。

低学年指導分科、少年団・朝青分科

 東日本集会では、本集会前日(1月23日)に、「低学年指導分科」「少年団・朝青分科(課外授業分科)」と題して論文発表や意見交換が行われた。

 低学年指導分科には約30人の教員たちが参加し、総連中央女性局の梁玉出副局長が講演。@なぜ子供たちに民族心を与えていかなければならないのかA私たちが主張する民族性とは何かB何を中心に民族性を与えていくべきか−の3点から提言を行った。そして、「教育、学校とは子供たちに生きていく力を与える場所」としながら、民族教育は「自分」という存在、すなわち日本に生まれながらも自分は朝鮮人だという自覚を与えてあげるためのものだと述べた。

 また、低学年の時期に@ウリマル教育A礼儀作法B人を愛する心と情−をしっかりと教えることが重要だと強調した。

 「少年団・朝青分科」では、中、高級部生徒たちを対象に、「週5日制」を有効活用した斬新な取り組みに関する論文が多く発表された。

 群馬初中中級部では、土曜日の「総合学習」でユニークな取り組みが行われている。土曜日をすべて課外授業にあて、1学期は「経済と環境」、2学期は「福祉と人」、3学期は「民族と楽器」といった具合にテーマを設定した。

 例えば、「経済と環境」では@お金の仕組みを知る調査学習、A学校の年間の水道、電気代を調べ、自分たちが日頃どれだけの浪費をしているのか、といった実践学習、B日本名水百選に選定されている場所に行き、水の味を比べるなどの現場実習−を通じて、環境問題に関する生徒たちの認識を深めるのにつながったという。

 論文作成に取り組んだ群馬初中の教員らは、「学校外部との連携が数多く必要だった。今後、こうした取り組みを続けていくには、日本学校との連携や各分野の専門家らを学校に呼ぶことも考えていきたい」と話していた。

情報分科

 03年度から情報教育が強化されたのにともない結成された「総連各級学校情報教育推進委員会」。教員らのスキルアップのための研究を重ねてきた。

 そして、教育研究事業にインターネットを活用する目的で、新たに「民族教育情報網」を開設した。名称は「e-MILEネット」。

 03年度から新教科書とカリキュラムに改編されたことから、教員たちの教育の質もそれに合わせていっそう向上させるための資料が必要だとして立ち上げたもの。

 同サイトは、これまでの民族教育における経験と教育知識を教員同士が共有、交換する会員制の民族教育ポータルサイト。利用できるのは、総連の現職教員に限る。

 サイトでは模範教案などを公開するとともに、各級教員たちの教案や資料を共有することで授業に必要な動画写真や音声なども取得できる。

 また、各種掲示板を利用し、活発な意見交換と経験の交流も望める。

 昨年11月末から1月にかけて、東京朝鮮中高級学校と神奈川初中高級学校で試験的に利用した結果を踏まえ、各級学校でも一般化できるようにと、今回の教研集会での発表に至った。

 説明を行った神奈川初中高の金燦旭教員は、@教育研究活動A教材研究B経験の一般化−のために活用しようとアピールした。

 「資料が蓄積されれば、10、20年後、教員たちの教育、教養への着実なスキルアップにつながる。世界的な趨勢に合わせて、民族教育もさらなる発展を遂げるだろう」と話していた。

[朝鮮新報 2004.2.9]