〈ウリハッキョでの新しい保健教育-上-〉 家庭、地域、学校で連携を |
昨年11月30日、大阪で開かれた在日本朝鮮人医学協会(医協)第26回学術報告会では、「朝鮮学校での新しい保健教育」についての報告と提言が行われた。朝鮮学校中央保健委員会責任者の辺秀俊氏(共和病院院長)の報告を2回に分けて紹介する。 学校保健の見直し ウリハッキョでは、1993年全教科目について全面的な改変を実施したが、残念ながら保健体育部門は手つかずの状況にあった。その後現場の保健担当教員らの強い要望と努力もあり、98年より初級部の保健カリキュラムが作られ実施された。 その過程でいくつかのウリハッキョにおいて新しい時代の要求に即した学校保健教育の先進的な経験などが創造され、これには東京、兵庫など医協の先生方の協力もあり、一般化の努力がなされて来た。 21世紀に入り日本の教育界と医療界においても学校保健の見直しが論議され、2002年度から「学校保健の新しい指導要領」が策定、実施されたが、ウリハッキョでもこれを参考にして03年初めに新たな保健体育カリキュラムを決定し、04年度からの実施を目指している。そのための「保健教科書」作りに医協の先生方にも積極的に協力していただいた。 日本学校の場合 現在の日本の学校保健をとりまく状況を見ると、日本においては1958年(昭和33年)に学校保健法が制定され、学校医の職務が保健管理を中心に明確に規定され、今日まで45年が経過した。この間学校における健康問題は大きく変貌してきた。 近年の社会環境の急激な変化は児童生徒の心身の健全な発達にもさまざまな影響を与えており、ストレスの増大、薬物乱用、いじめ、スポーツ障害、生活習慣病など新たな心と体の健康問題が指摘されている。 日本の学校保健をとりまく現在の状況は、時代の流れとともにさまざまな現代的健康課題が出現し、日本の学校教育の中で大きな問題となっている。これは、ウリハッキョにおいても少なからず同様の課題が提起されているものと思う。 特に心と体の健康問題については家庭、地域との連係のもとに学校教育活動全体を通じた健康教育を推進することが求められている。心の健康と生活習慣の問題は数多く調査研究されているが、心の健康問題を引き起こす要因として特に子どもたちにとって生活習慣や、生活環境の影響は大きいものと考えられている。 保健教育への参画 00年7月、日本医師会においても学校医活動における健康教育のあり方と推進のための方策について諮問をうけ、学校医の職務内容を大きく転換しようとしており保健管理のみならず、保健教育にどのように参画するのかが新たな課題となっている。例えば、個人を対象とした保健指導、児童生徒を対象とした健康に関する講話のような保健指導、また学校医が担任教師と連携して行う保健学習など、学校医としての資質の向上が必要である。 健康管理の内容については最近一部変更があった。色覚検査については近年色覚異常についての研究が進み、色覚異常と判別される児童生徒であっても大半は支障なく学校生活を送ることが可能なことが明らかになってきたことから、03年(平成15年)度から必須項目から削除された。結核については02年(平成14年)に厚労省の方針変更で全員に一律的に健康診断を行うような方法から、少ない罹患者に対して最大の効果をあげるように個別に集中した方針が示され、併せて小中学校で実施して来たツベルクリン反応検査と、陰性者に実施されるBCGの再接種については廃止とされた。現在結核対策においては学校検診の主役がツ反から問診となっており学校医の役割として内科検診時の有症状所見の把握と、児童生徒の感染源の大部分は家族、友人など近親者であり、感染が疑われた時の定期外健診への関与と助言が重要である。(辺秀俊、朝鮮学校中央保健委員会責任者) [朝鮮新報 2004.1.9] |