top_rogo.gif (16396 bytes)

同胞法律・生活センター連続講座「知って得する暮らしの法律・パート2」−第3回目「使いこなす介護保険」

 NPO法人同胞法律・生活センター主催の連続講座「在日コリアンのための知って得する暮らしの法律・パート2」の第3回目が13日、東京都台東区の同センターで行われた。今回のテーマは「使いこなす介護保険」。介護保険制度とその仕組み、実際の利用方法について、講師の林瑛純さん(ケア・マネージャー、住環境コーディネーター)が解説した。

介護保険制度とは

たくさんの人が参加したセミナー。関心の高さがうかがえた

 介護保険制度とは、これまで主に家族が介護を担ってきた痴呆や寝たきりなどの要介護高齢者を社会保険の仕組みによって社会全体で支える制度で、2000年4月にスタートした。

 介護保険制度には2つの特徴がある。

 ひとつは、運営母体が市区町村だということ。次いで、各種サービスを利用者本位で選択できるということだ。介護保険は市区町村が運営する地域密着型なので被保険者が利用しやすく、行政側も利用者の状態を把握しやすい。また、サービス内容を検討して自分にあったサービスを選択できるという利点がある。

講師の林瑛純さん

 介護保険サービスの利用は、まず申請から始める。申請は本人のほか、家族でも可能で、基本的には各市区町村の介護保険担当課が窓口になっている。ほかにも、指定居宅介護支援事業者、在宅介護支援センター、介護保険施設などで申請の代行を行っている。

 申請後、申請者宅に行政側から調査員が派遣され、心身の状態について聞き取り調査を行う(調査基準は全国均一)。誰でも受けられる医療保険とは違い、介護保険の場合は行政側から「要介護認定」を受けなければならない。

 次に行政側の依頼によって申請者の主治医が意見書を作成する(※いない場合は行政側が紹介する医師の診断を受ける)。その後、どのくらいの介護が必要かを保険、医療、福祉の専門家が審査する。介護が必要な度合い(要介護度)や保険で認められる月々の利用額などが決まり、本人に通知される。認定結果の通知は申請から原則30日以内に届く。

利用できるサービス

 「要介護認定」を受けたら、介護サービスを利用することができる。

 サービスは「居宅サービス」と「施設サービス」の2つに大別される。

 まずは「居宅サービス」。文字通り、在宅介護を中心としたサービスで、訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、訪問看護、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、福祉用具購入費の支給、福祉用具の貸与、住宅改修費の支給−の12種類がある。

 次に「施設サービス」。介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の3つがあり、この中から入所する施設を選んで利用者が直接、申し込んで契約を結ぶ。

 「居宅サービス」を選択した場合は、「居宅介護支援事業者」に連絡し、ケア・マネージャーと相談しながらケアプラン(介護サービス計画)を作成する(※作成にかかる費用は全額保険負担)。サービス事業者と契約を結び、ケアプランに沿ってサービスを利用する。サービスを利用したら、費用の1割を支払う。

保険料の納付

 では、保険料はどうなっているのか。

 介護保険は、全国民が40歳になった時点で自動的に加入し、一定の保険料を納めなければならない。65歳以上の「第1号被保険者」は、所得などによって6段階の保険料に分かれる。まず、市区町村ごとに保険料の「基準額」が決まる。この「基準額」を第3段階とし、そこから基準額×0.5が第1段階、×0.72が第2段階、×1.25が第4段階、×1.5が第5段階、×1.75が第6段階になる。保険料は3年ごとに見直される。

 つづいて40〜64歳までの「第2号被保険者」は、加入している各種医療保険によって決め方、納め方に違いが生じる。

 職場の健康保険の場合は、加入している医療保険の算定方式に基づいて額が決まり、給与から差し引かれる。

 対して国民健康保険(自営業など)の場合は、所得や介護保険対象者(第2号被保険者)の人数によって決まり、医療保険分と介護保険分を合わせて国保の保険料として世帯主が納める。

同胞高齢者問題

 最後に、同胞高齢者の場合はどうなっているのか。

 深刻な問題がいくつか存在する。まずは、無年金の同胞高齢者たちだ。年金が支給されないため、介護保険料納付は全て自己負担。

 実際に施設を利用した場合にも看過できない問題がある。というのも施設内では圧倒的に日本人利用者が多く、その中での日常的接触によって、心を開けずに不便を感じたり居心地の悪い思いをする1世が多いからだ。理由としては、長年の差別体験の中で生まれた日本人への不信感、言葉の違いからくる意思疎通の難しさ、食卓に朝鮮料理がのらないといった文化の違い等が考えられる。そのため、「要介護認定」を受けても施設を利用せずに自宅に閉じこもるケースがほとんどというのが同胞高齢者の置かれた現状だ。打開策としては、同胞高齢者のための施設作り、同胞ケア・マネージャーの育成などが挙げられる。この問題に関する組織的な取り組みが今、急務となっている。(韓昌健記者)

 ※次回は来年1月22日(土)午後2時から「暮らしの中の節税対策」を行う。

[朝鮮新報 2004.11.16]