1周年迎えた愛知「いこいのマダン」、1世たちの笑顔のために民族情緒あふれる場を |
「ハラボジ・ハルモニたちは今日で1歳を迎えました」 シルトク(甑で蒸したもち)を重ねて作った「特製ケーキ」の上には31本のローソクが、暗くされた室内に優しい光を灯している。 今までの実績が基盤に
10月25日、特定非営利活動(NPO)法人・コリアンネットあいちが運営するデイサービスセンター「いこいのマダン」開業1周年の記念行事が同センターで行われた。「31」という数字は同センターに通うハラボジ・ハルモニたちの数。「ふう」と息を吹きかけてローソクの火を消すハラボジ・ハルモニたちの表情は、まるで本当に1歳を迎えたように楽しげだ。 近年、日本の社会一般同様、同胞社会でも一人暮しの1世たちが増えている。そんなハラボジ・ハルモニたちが集まれる場所を提供しようという目的で作られた「名東トンネ憩いのマダン」が同センター誕生のきっかけだった。毎週水、土曜日に食事を提供し、朝鮮の民謡、チャンゴ、アレンジフラワー、塗り絵、工作などのレクリエーションを同胞ボランティアの手助けを得ながら行ってきた。その実績が基盤となり、NPO法人の認証を受け、現在のデイサービスへとつながった。
「いこいのマダン」でのサービス内容は、朝夕の送迎に始まり、バイタルチェック、入浴、季節ごとに彩りを変える朝鮮料理などの昼食、レクリエーションなどである。レクリエーションの時間には多様な遊びなどを行っている。 営業時間は月曜日から金曜日までの午前9時45分から午後4時で、一日の定員は20人。料金は、要介護認定の人はサービス限度額の10%となっている。 介護福祉士、看護師、ホームヘルパー2級などの資格を持つ12人のスタッフが、利用者に対し献身的なサービスを行う同センターでは、民族情緒あふれる雰囲気が「売り」である。利用者の中には、2人の日本人もいるが、朝鮮語と日本語の混ざり合った会話が飛び交うなかでもとても楽しそうだ。スタッフのうち3人の日本人看護師も「アンニョンハシムニカ」「ミアナンニダ」など、朝鮮語が自然と飛び出ると言う。 同センターの管理責任者である申美貴さんは、この1年を振りかえり「あっという間だった」と話す。「ハラボジ・ハルモニたちの笑顔、感謝の言葉が何よりの報酬ですね」。 互いの信頼関係が誇り 利用者の銭舜さん(84)と沈道先さん(83)はここに来ることが一番の楽しみなのだという。センターに通う日を、指折りかぞえて待っている。「今日は1周年ということで、愛知朝鮮第7初級学校の低学年児童たちも来てくれて、本当に楽しかったよ。ここに来ると時間がたつのが早く感じられる」と笑顔で話す。同センターに通い始めて、心も体も若くなったと利用者たちは口をそろえる。 同センターで唯一の介護福祉士である金貞連さんは、この1年の間にスタッフと利用者の信頼関係が築けたことを誇りにしている。「信頼関係がなければ、本当の介護はできませんから」と話しながら、「ハラボジ・ハルモニたちから学ぶことの方が多い」と強調する。「1世にはやはり、民族的な色が出せるデイサービスセンターが必要なんですよ」。 あらゆる艱難辛苦を乗り越え、涙なくして語れない人生を歩んできたハラボジ・ハルモニたち。「今が一番幸せ」と話す言葉の中に、「いこいのマダン」の存在意義が凝縮されている気がした。(鄭茂憲記者) [朝鮮新報 2004.11.6] |