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〈同胞法律・生活センターA〉 住まいに関するこんなトラブル

 Q 20年ほど前から借家ずまいで、毎月きちんと家賃を支払ってきました。大家さんは日本人ですが、親しく近所付き合いもし、これまでの契約更新の際も何のトラブルもなく円満にやってきました。しかし昨年、その大家さんが亡くなり、その息子が一切を相続し、私たち夫婦の住む家もその息子名義になったとのことです。先日、その息子が「家賃を2倍の20万に値上げする。応じない場合は契約を更新しない」という旨の内容証明便を送ってきました。夫婦ともに高齢のうえ無年金で、子どもたちの仕送りに頼らざるをえない生活なので、とうてい20万円の家賃など支払えません。また、値上げの理由も納得できません。私たちのような老夫婦が簡単に家を探すことなど困難ですし…。どうすればよいでしょうか?

 A バブル経済全盛期には「地上げ」など何かとトラブルのもとになった借地、借家に関する問題。ここ最近はまた別の種類の問題が起きつつあるようです。

 このケースのように、従来、大家さんと借家人との関係は、賃貸借契約による法律上の関係というよりも、お互いの人間的な信頼関係に基づくところが多かったようです。しかしながら、双方の当事者の高齢化や死亡などによって、これまでの円満な関係を維持していくことが難しくなる場合が多いようです。同胞法律・生活センターにも家主や地主が死亡して、その相続人との間で明け渡しや賃料の値上げなど、これまでにはなかったトラブルに直面する同胞からの相談が寄せられます。借りている側も高齢であることが多く、つぎの住まい探しや相手方との交渉など、当事者だけではなかなか手に負えない面倒な問題です。

 家賃の値上げについては、家主の一方的な意思表示によって値上げの効果が発生すると考えられており、相手方の借家人に通知されると、借家人はその値上げされた家賃を支払わなければなりません。しかし、家主は好き勝手に賃料を値上げできるわけではなく、その値上げ幅はきちんとした根拠のある適正なものでなければなりません。たとえば、固定資産税の増額や物価や地価の上昇、また周辺地域の同じような建物の家賃相場よりも低価であるような場合などです(借地借家法第32条1項)。

センター相談員紹介−広瀬めぐみ弁護士

 同胞法律・生活センターの相談を始めてすでに1年が過ぎました。在日のみなさんの抱えるさまざまな問題に触れ、自分がいかに一面的かつ楽観的なものの見方しかできなかったか、ということを深く感じています。

 また、みなさんの生きるコミュニティーの温かさ、団結力といった肯定的な部分とともに、その狭さ、それゆえに生じる軋れき、といった部分も感じています。

 法律家として、その負の部分を請け負うことになりますが、みなさんが少しでも暮らしやすい社会をつくるため、微力ながらがんばろうと思っています。(広瀬弁護士は同胞女性相談の日の担当、会社員、専業主婦を経て弁護士に)

 しかし、借家人は家賃の値上げについて納得がいかなかったり、あるいは家主と金額について折り合いがつかない場合は、その請求されている家賃を支払う必要はありません。従来通りの家賃か、あるいは借家人が相当と思う家賃を支払えばよいのです(同条2項)。しかし、従来通りの家賃(このケースでは10万円)あるいは相当と思う金額を支払おうとしたところで、家主は受け取らないでしょう。受け取らないからと言って、支払わないままでいると、「家賃滞納」を理由に、今度は明渡しを請求されることも十分にあり得るので、家主が家賃を受け取らない場合は、その家賃を法務局に「供託」(※注)すれば、滞納にはなりません。

 借家人と家主との間で交渉が難航するのであれば、「調停」による解決ということになりますが、それでも話し合いがまとまらなければ、裁判で適正な家賃を決定することになります。

 【注】供託とは:民法や民事訴訟法など法律の規定に基づいて、金銭、有価証券、その他の財産を、国家機関である供託所に寄託し、供託所を通じてその財産をある他人に受け取らせることによって、一定の法律上の目的を達成する制度。すなわち、一定の財産を相手方に受け取らせることによって、債務を消滅させることを目的とする。このケースのような、受け取ってもらえない家賃の供託を「弁済供託」といい、借家人が家賃を供託すると、借家人の家賃を支払ったことになる。供託手続きは法務局で行い、供託書、供託通知書(法務局に備置)、印鑑、資格証明書、供託金、封筒、郵便切手、賃貸契約書など。

◆サポーター募集中!◆

 同胞法律・生活センターでは住まいサポート活動を多くの有志の方々の協力を得ながら展開していきたいと思います。◆コリアンの住まい探しに協力してくださる不動産業者、家主の方々、是非ご連絡下さい。◆日本語をネイティブとしない方のための通訳サポーターも募集します。当センターの通訳サポーターとして登録させて頂いた上でボランティアとして活動していただきます。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長)

[朝鮮新報 2004.10.12]