同胞法律・生活センター連続講座「知って得する暮らしの法律・パート2」−第1回目「住まい探し」 |
NPO法人同胞法律・生活センター主催の連続講座「在日コリアンのための知って得する暮らしの法律・パート2」の第1回目が11日、東京都台東区の同センターで行われた。今回のテーマは「住まい探し」。在日コリアンに対する入居差別は今なお根強い。ニューカマーの「外国人」が増えている昨今、新たな差別も露骨化している。「現状はどうなのか」「どのように解決すればよいのか」。この問題に取り組んでいる、在日本朝鮮人人権協会理事・かながわすまいサポートセンター(「すません」)副代表の「安さんと、東京エイリアンアイズ(TAE)創設理事の高野文生さんを講師に招き、活動経験を学んだ。 「保証人は日本人を」 在日外国人が賃貸アパート・マンションを借りるときに伴う苦労は、昔も今もあまり変わらない。同胞社会で3、4世が主流となった今でもそうだ。日本人の大家の中には、入居を申し込むと「白? 黒?」「朝鮮? 韓国?」などと聞いてくる人もいるという。 不動産業者に対して行ったアンケート結果(「外国人の居住安定のためのガイドライン」、日本賃貸住宅管理協会発行)によると、「入居申し込み時に重視すること」は「保証人」と答えた業者は9割近い(複数回答)。次いで、「日本語能力」と「在留資格」が6割弱。さらに「保証人に求める要件」として、「日本人又は日本法人」を挙げる業者が全体の3分の2を占める。 両講師も、保証人の問題をクリアするのがとてもたいへんだと口をそろえる。 何十年以上も日本に住んでいる同胞にとっても、厳しい「要件」だ。保証人になってくれる日本人を探すのはそう簡単ではない。さらに「拉致問題」発覚以降、過激な朝鮮バッシングなどの影響から「朝鮮籍」を理由に断られるケースも増えている。 偏見から差別に
「さんが活動する「すません」では、「外国人」に住まいを仲介してくれる業者の紹介や、契約時や入居後のトラブルについての相談、通訳の派遣などを行っている。 「さんの調査によれば、「外国人」の事故率(家賃の滞納や未払いの末の失踪など)は低い。にもかかわらず、厳しい「要件」を求めるが、そのほとんどは「貸したことがない」業者だという。 問題を起こすのは「外国人」に限った話ではない。「まさに偏見に始まり、差別で終わっているのが現状」(「さん)。 「さんによれば、問題が起きたときの対処の仕方が重要であって、「外国人」を締め出すのは不当だ。
「留学生にやさしい不動産」リストの公開など、留学生の生活を支援しているTAEでは、留学生の住まい探しを支援している。 高野さんは自ら、留学生と一緒に不動産業者を渡り歩き、住まいを提供してくれる業者を探し回った。数百人の保証人を引き受け、マーケティングも行った。 業者がいやがる理由は、「実はイメージの問題」(高野さん)。「外国人は怖い」というイメージが日本人の中に蔓延してしまっている。とくに、黒人やアジアの人は、家の前で話しているだけで怪しまれたりする。 「外国人」への賃貸の際「不安の要因」として、「テレビや新聞報道、近隣の噂」「何となく不安」を挙げる業者がそれぞれ3割を超えているとのアンケート結果もある。 ネットワークを そうした中で保証人を代行する保証会社が注目されている。貸し手と借り手の間に保証会社が入ることで、円滑な貸し借りが行われる。 横浜市や川崎市では、居住支援制度を実施している。保証人が見つからない場合に、保証人の役割を担い、貸し手と借り手の両者を支援するという制度だ。 TAEは「保証人ボランティア紹介サービス」も行っている。このサービスのポイントは、留学生が地域に貢献するというところにある。利用者はTAEに保証人になってもらう代わりに、TAEの協賛店で働く。アルバイト、部屋、保証人という留学生が抱える問題を解決しようというものだ。 文京区では、高齢者と留学生が部屋を共有するという制度を実施する計画もある。高齢者は留学生の保証人や家賃などを請け負い、留学生は高齢者の介護をするというもの。 在日コリアンの高齢者の中には、数十年前から住んでいた家を、息子の代に移った大家から追い出され、行く当てがなく困っている人も多い。無年金の問題も重なり苦労は計りしれない。 同胞法律・生活センターでは、事務局に「すまいサポート」部門を設け、住まいに関する同胞の悩みの解決を目指す。良心的な不動産業者や家主のネットワークを構築し、保証制度を実施する構想も練られている。 「すまいサポート」部門を担当する「さんは「一世の同胞たちは字も読めず、お金の勘定の仕方もわからない状態から同胞社会を築いた。われわれは契約書も読めれば、専門家もいる。自分の周りにいるいろんな人とのネットワークを築いていくことが大事だ」と語った。(李泰鎬記者) [朝鮮新報 2004.9.14] |