年金制度、どこが変わったの? |
2004年6月5日午前の参院本会議で、年金改革関連法が賛成多数で可決、成立しました。20歳以上の在日同胞が加入対象となっている現在の公的年金制度に関する改正法案だけに、無関心というわけにはいきません。今回の改正は、同胞の生活、家計に及ぼす影響が大きいだけではなく、場合によっては将来受給できるであろう老齢年金の受給金額に大きな影響を与えかねない法案だけに、年金制度のどこが変わり、今後私たちの生活にどのような影響があるのかなどの主な変更点をまとめました。 少子高齢化を考慮 今回可決、成立した年金改革関連法案の改正実施時期および主な改正内容は別表のとおりで、「少子高齢化社会」「女性と高齢者の社会進出」等の日本の将来の社会情勢を考慮し、保険料の引き上げや年金給付水準の引き下げなど、生活に直結する内容が多数盛り込まれています。 年金保険料については、今回の改革の柱として、「保険料固定方式」の導入があります。これは、年金保険料の上限を定め、定めた上限に達するまで、保険料を毎年引き上げていくものです。 保険料の引き上げは、04年10月から会社員が加入する厚生年金の保険料率(現在は年収の13.58%を労使折半)を毎年0.354%ずつ引き上げ、17年度以降は18.30%に固定されます。 また、05年4月から自営業者などが加入する国民年金の保険料(現在は月額1万3300円)が、毎年月額280円ずつ引き上げられ、17年度以降は1万6900円に固定されます。 これによって、現在月給が25万円、年2回のボーナスの合計が100万円の給与所得者の年間保険料負担額は27万1600円ですが、今後も収入が現在と同額と仮定すると、引き上げが終了する17年9月以降の年間保険料負担額は36万6000円となり、年間で9万4400円増えることになります。 また、現在国民年金に加入し夫婦2人分の国民年金保険料を毎月2万6600円、年間31万9200円支払っている家庭では、年間で6720円ずつ負担が増え、引き上げが終了する17年度で夫婦の負担は月額3万3800円、年間では40万5600円となり、年間の負担は現在に比べて8万6400円増えることになります。 現役世代賃金の50% 年金給付については、高齢化の進行で年金給付額がふくらむことに備え、05年4月から、年金給付水準を抑制する新しい仕組みとして、毎年の年金額を決める際に、保険料を負担する現役世代人口の減少率や、高齢化による受給期間の伸び率を反映し、年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が導入され、新たに年金を受給する場合の給付水準は、モデル世帯で現役世代の平均賃金の50%となります。 このほか、05年4月から第3号被保険者の届け出漏れを救済するため、過去にさかのぼって未加入期間を解消する特例措置を講じることになっています。 サラリーマン世帯の専業主婦は、国民年金の「第3号被保険者」とされ、自分で保険料を払わなくても老後に年金を受け取れることになっていますが、そのためにはあらかじめ手続きをしておくことが必要でした。しかし、現行制度では届け出をしていなかったことに後から気づいても、さかのぼって第3号被保険者と認められるのは2年間だけで、それより前は「保険料未納」の扱いになり、1年当たり年額約2万円も年金が減ることになりました。また、最悪の場合は無年金になる恐れもありました。今回の年金改革関連法案には、こうした場合についての救済措置も盛り込まれています。 以上が主な変更点です。このほかにも重要な改正がありますが、改正実施時期が近づいたとき、あらためて解説したいと思います。(韓鐘哲、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー) [朝鮮新報 2004.7.14] |