「ご飯どろぼう」 |
「妻が総聯(チョンリョン)の人が来るというのをソンヒョン(隣の里)と聞きまちがえたらしく、これといったものは準備できていませんが、たくさん召しあがってください」
平安南道温泉郡麻永里を訪ねた際、「ぜひ家で昼食を」という管理委員長の言葉に甘えて、お邪魔した。 麻永里に在日同胞が来たのは初めてだそうで、日本からの「珍客」を手厚くもてなしてくれた。 テレビや新聞で、右傾化する日本当局の動静について詳細に報じられていることもあり、最近の情勢や在日同胞の暮らしぶりについてしきりに聞きながら、「いろいろと大変でしょうが、とにかくがんばってください。祖国からいつも応援しています」とおおいに激励してくれた。 こうしていろいろな話をしている間にも、食卓にはおいしそうな料理が次から次へと運ばれてくる。温泉郡は朝鮮西海沿岸に位置する農村で、海の幸はもちろん山の幸も豊富だ。 西海スケソウダラの干物や豚肉炒め、ニンニクの唐辛子漬けなど、一口食べるたびに舌鼓を打った。 極めつけは、青唐辛子をオキアミの塩辛に漬けて作った、通称「ご飯どろぼう」。 「まずご飯をほおばり、『ご飯どろぼう』と一緒に食べる」のが流儀だそうで、これだけでもどんぶり2杯は軽く平らげることができる。あまりのおいしさに遠慮も忘れて、4皿も食べてしまった。 はじめは「こんな田舎の料理で満足していただけましたか」と心配していた管理委員長夫妻も、記者の食べっぷりにはびっくりしたようで、「こんなにたくさん食べてくれてうれしい」と喜んでくれた。 「秋にまた来てください。今度はちゃんと準備して待っています」という2人の言葉に、朝鮮の人々の人情の厚さを感じつつ、「よほど腹をすかせて来なければ」という覚悟≠抱きながら、平壌への帰途についた。(松) [朝鮮新報 2004.4.20] |