〈ウリ・トンポ・ブライダルフェア〉 催しの一部から |
23日に東京・新宿の京王プラザホテルで行われた「ウリ・トンポ・ブライダルフェア」では、婚礼衣装のファッションショーやシネン(嫁入り)の再現、1930年代から2000年代までの結婚式をテーマにしたフォトコンテスト、各地文化サークルによる芸術公演、演劇、ネイルアートのパフォーマンス、抽選会など、さまざまな催し物が行われた。(記事=金潤順記者、写真=姜鐘錫記者) チョゴリ試着、年齢問わずにぎわう
会場には衣装、エステ、メイク、ブーケ、写真、ビデオ、招待状、看板、ジュエリー、引出物、小物、家具、餅、キムチ、旅行など、約40の同胞ブライダル関連業者のブースが所狭しと並べられた。 その中でもとくににぎわいを見せていたのが、場内各所に設置されたチマ・チョゴリの試着室。「ピンク? それともオレンジがいいかな」と鏡の前で衣装を合わせる若い女性や、「せっかく来たんだから私も一着着てみようかしら」と、水色のチマ・チョゴリを手に取る年配女性まで、年齢を問わず、お気に入りの衣装を試着する女性たちであふれかえった。 柳艾実さん(18)は来年成人式を迎える。「今日は大好きなピンクのチョゴリの中からとっておきの一着を見つけようと思って。どれが似合うかいろいろ試してみたい」と話した。友人の康潤玉さん(19)は、「最初に目についたから」と黄色のチマ・チョゴリを試着。アルバイト仲間の三浦里枝子さん(21)は「ディスプレイなどで見たことはあるけど、着てみるのは初めて」と淡いパステルピンクの衣装を試着して楽しい様子だった。 康さんは「せっかく大きなイベントなんだから、試着だけではなく、ヘアメイクとか写真なんかも撮れたらもっと良かった。それでお見合い写真なんか撮ってみちゃったりして」と笑顔で話した。 演劇「ポムマジ」、おおいに笑わせ考えさせる
エミネンスホールでは、今どきの同胞結婚事情をコミカルに描いた演劇「ポムマジ(迎春)」が2回上演された。出演は朝鮮大学校文学歴史学部の生徒と同校演劇部員とそのOBたち。 演劇は、とあるブライダル相談センターに同胞から寄せられた悩み≠再現する形で展開される。 まずは、娘の相手が彼女の両親に結婚の承諾を得る場合。故郷はどこか、家業は何か、総聯イルクン(活動家)で食べていけるのか…など、在日ならではの悩みや事情について、おおいに笑わせ時には泣かせる。 娘の幸せを願うあまり、いろいろ難癖をつけるアボジ。結局は当人たちの思いを尊重するべきだというオチになっている。 劇中、役者がマイクを持って場内の観客にインタビュー。「子どもの結婚相手への条件として、故郷をあげますか?」との質問に「あげないと言ったらウソになる」と正直に答えるオモニ。「気にしない」と答えた人でも、実は相手は同郷の人だった。マイクを傾ける役者に「同郷の者を探しなさい」とアドバイスまでしていた。 2つ目のシーンは、三十路を前に仕事に燃える娘に「写真」ならぬ「ホンモノ」のお見合い相手を連れてきた両親。「死ぬ前に孫の顔が見たい」「女の幸せは結婚にある」と娘に迫る。その男性は娘の担当編集者で、「僕を君の人生からクビにするなら、編集長に言って僕が君をクビにする」と脅迫≠ワでする始末。仕事を続けたいからと、かたくなに結婚を拒否してきた娘だが、最後には自分を理解してくれる男性に気持ちが傾いていく。 舞台を見にきた親の世代、子どもの世代とも思い切り笑い、しみじみと考えていた。李丙順さん(72)は「子どもから見れば親はうるさいし、親から見たら子どもはさっさと結婚させたい。女性が高等教育を受けるようになって社会に出て働きたい気持ちもわかる。でも、子どもを生んで、育てて、社会に送り出すことも立派な仕事」と話していた。 フォトコンテスト、両親の結婚写真が1位、西東京在住の姜さん 会場の一角にはフォトギャラリーが開設され、1930年代から2000年代まで30点の結婚写真が展示された。 写真に収められた新郎、新婦はどれも初々しい。 西東京在住の姜英美さん(52)は、フォトコンテストに両親の結婚写真を出品した。新郎16歳、新婦19歳、撮影場所は自宅、1930年代の写真である。 16歳の新郎の顔にはまだ幼さが残る。「両親は、親同士の約束で結婚した」という。 「アボジと結婚するため、オモニは玄海灘を1人で渡った。当時は親の言うことは『絶対』だったから。子に他言は許されなかった」 在日2世の姜さんは、民族教育を受け、志を共にする人生の伴侶にめぐり合った。26歳になる息子は現在、日本の会社に勤めている。 「息子には私たちがそうであったように、同じ民族同士の結婚を望んでいる。しかし、職場の環境を見ると周りは日本の人ばかり。息子も親の気持ちは知っていることだろうし、できることなら同胞女性と交際したいと願っているはず」 言葉の端々には、息子は親の期待を裏切らないという暗黙の信頼が見え隠れする。 林玉伊さん(28、群馬県)は「結婚してみてわかることだけど、生活習慣の違いはやはり結婚生活にとって大きなハンディになると思う。毎日の食事、家族や親族とのつき合いなど、結婚生活は、恋愛時代に想像していたものとはずいぶん違うものなんだなということがわかった」と話していた。 フォトコンテスト入選作品 同胞結婚相談中央センターでは同胞結婚相談所設立10周年に際して、婚礼写真を同胞から広く募集した。「ウリ・トンポ・ブライダルフェア」当日、会場に応募作品を展示し、訪れた人々による投票形式で優秀作品の順位を決めた。
その結果1位は娘の姜英美さんが応募した両親の婚礼写真。姜昌元(新郎)、金丁玉(新婦)夫妻の結婚式は1935年4月19日、新郎の自宅で行われた。当時、新郎は16歳、新婦は19歳。生まれた時から親同士の約束で結婚が決まっていたという。「母は先に日本に来ていた父と結婚式を挙げるために一人玄海灘を渡った」(姜さん)。この写真は投票総数244票のうち36票を獲得した。 2位は1955年10月21日、新婦の自宅で撮影された金錫煥(新郎、当時29)、王月仙(新婦、当時21)夫妻の婚礼写真。娘の姜順姫さんが応募した。南朝鮮から一人で渡ってきたアボジは日本に父母、親戚がいないため義父母のおかげで式をあげられたそう。当時、結婚式は3日間続いたとか。(投票数34票) 3位には朴宗普i新郎、当時28)、李政愛(新婦、当時26)夫妻の婚礼写真が入選。1974年4月20日、西東京第2学校講堂で撮影したもの。民族教育の現場に携わってきた両親の思い出の1枚。西東京の同胞たちによって結婚式は執り行われた。娘の朴美奥さんはいつもオモニと言い争いが絶えないが、オモニへのプレゼントとして、また、亡きアボジへの尊敬の念を抱いて応募したという。(投票数27票) [朝鮮新報 2004.3.30] |