同胞法律・生活センター連続講座最終回、年金問題テーマに |
NPO法人同胞法律・生活センターが主催する「在日コリアンのための知って得する暮らしの法律」連続講座の5回目が13日、東京上野の同センターで行われた。最終回となったこの日のテーマは「どうなる? これからの年金のメリット・デメリット、そして各種保険について」。年金法の改正が日程に上る中で、同胞にとっても重要なこの問題。本紙でも連載中の年金アドバイザーでファイナンシャルプランナーの韓鐘哲氏(社会保険労務士、行政書士)が講師として出演した。いくつかのポイントを紹介する。 現在の社会保険制度 まず、現在の社会保険制度について。
広義の意味での社会保険の中に狭義の意味での社会保険と労働保険、社会保険(狭義)の中に医療保険、年金制度がある。 医療保険の中には国民健康保険、健康保険、船員保険、介護保険が、年金制度の中には国民年金、厚生年金保険、農林漁業団体職員共済組合が含まれる。両制度にまたがる形であるのが各公務員共済組合だ。労働保険の中には「労災」と言われる労働者災害補償保険と雇用保険が含まれる。 このことからわかるように、年金は保険の一種。不測の事態の際に生じる経済的リスクを保障するものと考えるべきだ。つまり、年金とは「毎年一定額を、年金制度を運営する者が年金をもらえる資格のある人に支払い続けていく仕組み」のことだ。 体系と給付の種類 次に、年金制度の体系と給付の種類について見てみよう。 2002年3月末現在で年金の対象者となるべき被保険者数は7017万人。これには当然在日同胞も含まれる。内訳はサラリーマン、公務員等の第2号被保険者が3676万人と最も多い。次が自営業者等の第1号被保険者で2207万人、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者が1133万人の順となっている。1〜3号被保険者は国民年金に加入することになる。第2号被保険者の場合、厚生年金に入ると同時に国民年金保険者になる。 国民保険にしか加入していない第1号被保険者よりは、厚生年金に入っている方が当然支給額は多くなる。それより多いのが共済年金加入者、つまり公務員だ。 最近話題になっているのが日本版401Kと呼ばれる確定拠出年金。他の年金は確定給付型と言われるが、この確定拠出年金の場合、月々の支払い額は本人が決める。 第2号被保険者、つまりサラリーマンや公務員の妻ないしは夫が第3号被保険者だ。扶養者=妻と思われがちだが、生計を主に立てているのが妻で、夫にまったく収入がなければ、夫は妻の被扶養配偶者となるのも可能だ。 各制度による給付 各制度の法律による給付は次のとおり。 老齢 国民年金の給付=老齢基礎年金、付加年金。厚生年金保険の給付=老齢厚生年金、特別支給の老齢厚生年金。 年金受給可能額は減額へ 厚生労働省では、満65歳以上を高齢者と定義している。現在では、65歳以上人口を「高齢者人口」、その総人口に占める割合を高齢化率(高齢者人口割合)として高齢化の程度を見ることが多い。 また、高齢化率7%を超えた社会を高齢化社会と呼ぶことがあるが、これは1956年の国連の報告書において、当時の欧米諸国の水準を基にして呼んだのが始まりとされる。日本では、60年までは60歳以上を「老齢人口」としており、65歳以上になったのは65年からだ。高齢者人口を見る時の年齢区分は、人口や社会経済状況によっても変わってくる。これは同胞社会においてもさほど変わらないものと思われる。 ここ最近の平均寿命の推移を見てみると、男性は98年が77.16歳、99年77.10歳、2000年77.72歳、01年78.07歳、02年78.32歳。女性は84.01歳、83.99歳、84.60歳、84.93歳、85.23歳。こう見ると、2050年には65歳以上の高齢者が全体人口の35.7%を占めると予測されている。3分の1を高齢者が占めるわけだ。この統計をもって年金の破綻を予想する向きも少なくない。 では、老後に必要な生活費はどれくらいなのか。 金融広報中央委員会の01年の統計によると、夫婦2人で最低限度必要な1カ月の生活費は24万円、ゆとりのある生活を送るには約37万円必要といわれる。一人暮らしの場合は、これの約60%程度が必要だ。 老後の生活費の要となる公的年金は、現在の年金制度では、国民年金に40年間加入した方で月6万7000円、厚生年金保険に40年間加入した方で月約17万4000円の老齢年金の受給が可能だ。しかし、今後の年金受給可能額は確実に減額してゆくことが予想される。(文聖姫記者、文責編集部) [朝鮮新報 2004.3.23] |