〈ざいにち発コリアン社会〉 人気アニメの背景画描く金純愛さん |
人気テレビアニメの背景画を制作する「アトリエローク」(東京都杉並区)で働く金純愛さん(21)。昨年まで「ドラえもん」の背景画を担当し、スタッフの一員として名を連ねた。今年からは「クレヨンしんちゃん」を担当している。「アニメの世界って本当に奥が深い。自分で考えた背景をアニメの中でしっかり表現していきたい」と語る。 風景画が好き
「テレビで見ていた『ドラえもん』の制作スタッフになるなんて考えてもいなかった」と入社当時を振り返る。 社のメンバーは現在26人で、「ドラえもん」のほか「クレヨンしんちゃん」「ちびまる子ちゃん」「忍たま乱太郎」などの人気アニメを扱っている。 「ドラえもん」のスタッフとしては、色彩設計、背景、音響制作、音響効果、編集、現像などの分野がある。金さんは入社後1年間、背景を担当した。 「『ドラえもん』のエンディングロールに自分の名前が出た時はとてもうれしかった。親はあんまり興味がなかったみたいですけどね」 東京朝鮮第4初中、東京朝鮮中高級学校で美術部に所属。風景画を描くのが大好きだったという金さんは、「描けば描くほど進歩していくことを感じられるのが楽しい」と話す。 絵の魅力にとりつかれ、「将来は『絵』に関わって食べていけるようにしたい」という思いから、東京中高卒業後は2年間、アニメ関係の専門学校に通った。アトリエロークに入社したのは昨年。背景画を制作する会社だと知ってはいたが、「人気アニメを扱っているとは知らなかったので、とてもびっくりしました」。 デジタル処理が主流となっているなか、ここで描かれる背景はすべて手書き。そうすることにより、質の良い作品を作ることができるという。 セル(透明なフイルム用紙)は一切使わず、画用紙に描かれた背景を筆で一つひとつ色を塗っていく。とても慎重さを要する作業だ。 一つの作品が完成すると美術監督に見てもらうが、「直しが入るのは当たり前。色彩や手法などまだまだ学ぶべき点が多い」。 美術部に所属していた中、高級部時代とはまったく違う世界だが、「学生時代の経験が役立っているのは確か。昔から風景画をよく描いていましたから」と語る。 常にレベルアップを アニメができるまでを簡単に説明するとこうだ。 まず台本からアニメ用の台本(=絵コンテ)を作成する。絵コンテからレイアウト用紙に、音や言葉と合うように1秒ごとの動画を配分していく。1秒間に、24コマの動画が必要だ。 必要な動画が決まったら、人と背景を別々に作画する。その後、動画にするための撮影やアフレコが行われる。 現在は「クレヨンしんちゃん」担当で主に室内を描いている金さん。机やいす、台所、皿、茶わんなど、普段アニメを見ていてもあまり目のいかない部分を描く。 「目立たないようでも背景はとても重要。登場キャラを生かし、演出する大切な役割だと思っています。決まった背景だけじゃなく、今後自分で考えたものが表現できればいいですね」 しかし、アニメの世界に入ってまだ1年。経験不足で教わることの方が多いというが、「しっかり仕事をこなすよう心がけています。レベルアップを図って、いつかは周りの人たちを追い抜けるように努力していきたい」と胸のうちを語る。 この世界で働く人には南朝鮮の人が多い。「最近はいろんな分野で活躍する在日コリアンがとても多い。アニメの世界でも自分みたいな『在日』がいることを日本の人や南の人にも少しずつ認知してもらい、広めていければいいですね」。(金明c記者) [朝鮮新報 2004.2.23] |