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在日本朝鮮人医学協会学術報告会で発表された報告「民族和解運動の現住所と展望」〈下〉

人道的支援運動

 (1)性格と意義

 この分野の運動は、第3世界に対する支援と同様に人道主義的運動と交流協力を通じた民族和解運動という両側面を持っている。この運動は90年代中頃、北が経済危機に直面し、97年、北の同胞助け合い運動に数百万人の南の国民が参与する民族運動に発展した。その後南北両側で大きな変化をもたらした。南北間においての不信と敵対から和解と協力への共感と認識における転換の契機となった。

 続いて2000年の6.15南北首脳会談を機に、南北関係は当局と民間で制度的交流段階へと進んだ。特に人道支援運動はその後、南北政治状況の変動にもかかわらず、南北間の相互信頼の最小限度の安全パイとして機能しながら、その事業の領域と関連組織が日ごとに増えている。

 (2)様相と特徴

 第1に、注目すべき点はこの運動の性格が、初期の緊急救護支援から保健および農業分野での開発協力事業へと変化したことである。現在南の民間団体の大部分の支援事業が食料増産のための農業資材支援や基礎保健医療サービス改善のための保健医療支援事業に集中している。

 もちろん、支援規模は相対的に減少しているが、貧困地域および貧困階層を支援する単純食料支援運動は依然として行われている。そのほかにも南北の相互利益となる南の剰余生産物支援事業(柿、みかん、卵、わかめ、粉乳等)と山林緑化、教育分野(教育機材や教科書用紙)で支援事業の領域が広まりつつある。

 農業、畜産分野と保健医療分野の代表的な事業と団体は次の通りである。

 農業、畜産分野:○農機械および農業資材技術開発事業(ウリ民族助け合い運動)、○とうもろこし、じゃがいも種子研究開発事業(とうもろこし財団、南北農業発展協力民間連帯、ワールドヴィジョン)、○やぎ種蓄改良事業(C.C.C、ウリ民族助け合い運動)、○乳牛牧場支援事業(クンネイバス)、○鶏支援事業(セマウル運動、農協、クンネイバス)
 保健医療分野:○製薬(輸液、錠剤)工場建設支援(ウリ民族助け合い運動、国際飢餓対策機構、クンネイバス)、○結核退治事業(ユウジンベル財団、大韓結核協会)、○子ども栄養病院支援事業(南北子ども仲良し展)、○眼科病院建設支援(ライオンズグループ)、○医療装備支援事業(医師協会、漢医師協会、歯科医師協会)、○医薬品支援(子供医薬品支援本部、韓民族福祉財団)
 児童給食支援事業:○麺工場運営(ワールドヴィジョン、祖国平和統一仏教協会)、○パン工場運営(韓民族福祉財団、韓国福祉財団)、○羅津・先鋒児童給食(JTS)、○会寧・恵山・南浦児童給食支援(ウリ民族助け合い運動)
 山林緑化分野:○養苗場運営(平和の森)

 第2に、南北交流協力事業の活性化と多様化によって交流相手の対象と範囲が広まり深まっている。現在北の対南接触窓口団体は、朝鮮アジア太平洋平和委員会、民和協、民経連、宗教団体(基督教徒連盟、仏教徒連盟、カトリック教徒連盟、天道教連盟)を挙げられる。そのうち民間交流は宗教団体を除外すれば一般的に民和協が、部分的には民経連(経協窓口)が南側の団体との事業窓口としての役割を果たしている。

 しかし、農業、畜産、保健医療分野での協力事業が具体化されるにつれ、農業科学院、地方の協同農場や畜産牧場、個別病院、医学協会、製薬工場、幼稚園、保育所、実地事業機関および単位が南北交流協力事業の主体として登場し、頻繁な交流がなされている。これは特別な意図がないとても自然な過程である。

 第3に、南北間の信頼形成に大きく寄与している。数年間に渡る非政治的で条件なしの人道的な活動に対して、北は感謝と信頼をよせている。02年の場合、2次西海交戦と南の大統領選挙、ポジュギ(ただであげる)論争の影響を受け、人道支援規模は01年度の80%程度であったが、訪北人員と回数はむしろ150%以上増加している。

 また、当局間の対話が中断された03年初めにも、民間団体は2度にわたり西海直行路を通じて大規模訪北を実現させたことから、北の信頼度をうかがえる。特に02年からは南北が共同で協力して完工した事業場では南の民間団体と北の担当機関の共同名義で懸板(記念碑)をかけることも可能になった。北の人士たちはこれを支援規模とは関係なく「同胞愛の象徴=和解協力の表現」と話している。

 第4に、南の保健医療、教育、農業分野の主要団体と地方自治団体が対北支援および協力事業に積極的に立ち上がっている。これらの団体は人道的支援とともに団体の性格に合った北の機関や団体との交流に高い関心をよせている。

 このような現象は、南北交流協力事業の全国的な拡散、国民的な共感の拡散で重要な意義を持っている。事実、南の社会では南北問題に関しては国民的合意水準が低い。政治圏の超党的姿勢とともに交流協力主体の全国化は人道支援事業の活性化を越え、民族和解と統一政策推進の大きな基盤となるであろう。こうした点から江原道、済州道についで京畿道や全羅南道、全羅北道、釜山市など広域な地方自治団体が対北支援や交流に立ち上がりつつある動きはとても意味深いことであろう。

 しかし、いまだに南の民間団体の人道的支援運動は満開の花を咲かせたというよりも、開花の初期と言える。民間の対北支援運動は非政治的、人道主義精神に基づくが南北間の緊張、葛藤要因からみて全体的に自由ではない。特に南北当局間の問題が発生するたびに、国民の関心と参与は大幅に静まってきた。まして北の核問題が長いトンネルから抜け出せていない現時点で、対北交流協力や人道支援に対する国民の関心がほとんどないといっても過言ではない。

まとめ

 民間団体の人道支援運動は北の経済危機が解消されない限り、相当な期間、南北交流協力の重要な領域になるであろう。しかし、北の核をめぐる昨今の状況とその間の民間交流の歴史を振り返るならば、民間運動の課題は明らかである。北の核の平和的解決のための平和運動とともに、人道的交流協力の国民的参与基盤の拡充のために努力することに圧縮される。これらは互いに離れられない相互補完的関係にある。北の核危機が深まれば、人道支援と交流協力は制約をうけざるをえない。

 朝鮮半島問題は南北だけではなく、東アジアや世界平和でもとても重要な位置にある。このことから朝鮮半島を平和と協力の地帯へと変える努力はみんなの課題であろう。民間団体の人道支援運動はこの性格上の政治変動から相対的に自由であり、なおかつ南北間の和解協力の開拓者=メッセンジャーとしての役割を遂行しなくてはならない。人道支援運動を通じて朝鮮半島の平和と共存協力の橋渡しへとつながる事業に皆が一つにならなければならない。(康英植、ウリ民族助け合い運動事務局長)

[朝鮮新報 2004.2.16]