トンポならではの特殊な悩みテーマに第4回同胞法律・生活センター連続講座 |
NPO法人同胞法律・生活センター主催の連続講座「在日コリアンのための知って得する暮らしの法律」の第4回目が24日、同センターで行われた。テーマは「戸籍、国籍、外国人登録、在留資格などなど―トンポならではの悩みあれこれ」。特殊な歴史的、政治的背景を持つ在日同胞の出生から死亡に至るまでの日常生活で生じる法律問題について具体的な事例を挙げながら説明がされた。同センターの金静寅事務局長が講義した。(※本文中、(朝鮮、韓国表示)とあるのは外国人登録上の国籍表示のこと) 朝鮮籍同士の婚姻届、民事局長通達245号適用 まずは婚姻について。 「朝鮮表示同士のカップルが婚姻届を出しに市役所に行ったが、戸籍謄本あるいは婚姻要件具備証明書の提出を求められた。朝鮮表示なので戸籍はない。どうすればよいか?」
そもそも戸籍を持たない朝鮮表示の人に対して戸籍を求めるのは、ひとえに係の者が不勉強であり、在日同胞の存在に対してよく理解していないためである。もともと戸籍は日本固有のもので、朝鮮半島には、植民地時代に導入された。現在は、旧植民地であった韓国や台湾以外はおおかた戸籍制度を持たない。 そこで在日朝鮮人の歴史的背景に鑑み、55年2月9日付で民事局長通達第245号が出されている。それによれば、婚姻の要件を具備している旨の申述書を添付すれば婚姻届は受理される取扱いになっている。申述書の様式は、役場によって準備されているところもある。 次に出生について。 同胞同士の夫婦の間に生まれた子につき、親のいずれかが「特別永住者」であれば、出生届、在留資格取得申請、外国人登録新規登録申請は最寄りの市区町村役場で同時にできる。 では、親が「定住者」の場合はどうなるのか? その場合は、市区町村役場に出生届を出し、その後最寄りの入国管理事務所に在留資格取得を申請し、受理された書類を持って再び役場で外国人登録新規登録申請をする。基本的に親が「定住者」の場合、その子も「定住者」資格を有する。 次に、「子の出生届を提出する際に、役所で『子の名前の漢字が人名漢字の範囲外なので、別の漢字に変えて下さい』と言われ受理されなかった。しかし、その漢字は『トルリムチャ』(兄弟間の名前に共通で使われる一定の漢字)なのでほかの漢字には絶対変えられない。どうすればよいか?」というケース。 これに関しては、81年に出された民事局長通達第5537号がある。在日同胞や中国人のように本国法上姓名を漢字で表記するような場合、日本人に対して通常適用される人名漢字の範囲は関係ない。よってどんな漢字も使用できる。しかし、同胞と日本人との間に生まれた子ども(重国籍だが、日本国籍も持っているので、名前は常用漢字の範囲のみ適用)の場合は問題が複雑になる。端的に言えば、出生届を受理しない役場の処分につき家庭裁判所に不服申し立てをするか、あるいは子の日本国籍離脱手続き後に家裁で名の変更の申し立てを行うなどの方法がある。 重国籍の子、日本国籍離脱で朝鮮籍取得 次に、同センターに寄せられる相談案件の中で常に上位を占める国籍問題。 朝鮮表示と韓国表示の婚姻で生まれた子は、父母の意向によりどちらかの国籍表示にすることができる。 日本人との婚姻により生まれた子は、重国籍者となり、日本国籍も併せ持つことから、出生届の提出により日本人の親の戸籍に記載され日本人の親の姓を名乗る。この場合、子を朝鮮あるいは韓国表示にさせるためには、日本国籍離脱手続きを行う必要がある。その手続きに必要なものは、国籍離脱届(法務局の国籍課窓口に備置)、子の戸籍謄本、子の住民票、親の外国人登録原票記載事項証明書と印鑑。書類が受理されると手続きが完了した旨の通知が送付され、それを持って最寄りの市区町村役場で外国人登録(以下外登)、在留資格の手続きを行う。 また、日本人の妻との間で生まれてくる子に夫の朝鮮姓を名乗らせる場合は、@まず最初に、日本人妻の氏を夫の朝鮮姓に変更する(婚姻届提出後6カ月以内の場合は市区町村役場で、6カ月を経過している場合は、家庭裁判所で「氏変更の申し立て」を行う)、その後に生まれた子は、母と同じ姓(夫の朝鮮姓)を名乗るA家庭裁判所で子の「氏変更の申し立て」を行い、子を筆頭者とする単独戸籍を作る―などの方法がある。 次に、在日同胞が外登上の名前を実際に使用してきた名前に変更する場合。 本来、名前はその人の人格権に属するもので、その人の本国機関が発行する名前の変更などの証明書によって、日本の外登の名の訂正を行う。在日同胞の場合、本籍地の戸籍に真の名前の記載がある場合はその戸籍謄本を提出して、外登上の名前を変更できる。 しかし、戸籍に記載がない朝鮮表示の同胞の場合は、未承認国家という理由で日本の法務省が不当にも朝鮮政府発行の証明書を認めないため、それを提出しても受理してくれない。しかし、日本の家裁で「名の変更の申し立て」を行う方法がある。 また離婚後の子の姓について例えば、日本人の夫と結婚した韓国表示の女性が離婚し親権者として子を養育する場合、韓国民法第781条但書により子は母と同じ姓を名乗ることはできるが他方、夫婦ともに朝鮮あるいは韓国表示の場合は、朝鮮半島古来からの姓不変の原則(子は父の姓を受け継ぐ)離婚し妻が親権者になっても子に妻と同じ姓を名乗らせることは現行法においてはできない。(千貴裕記者) [朝鮮新報 2004.1.27] |