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花園の芝は忘れない

 ここだ。

 近鉄東花園駅から徒歩7分。ここから朝高まで歩いていけない距離じゃない。昔から近い近いとは聞いていたが、あらためてそのことを実感した。

 …。

 さあ。

 しっかりしろ。まだ泣く場面じゃない。もうすぐ新たな歴史が始まる。見逃すな。この目にきっちり焼き付けろ。落ち着け。落ち着くんだ。ああ、歓声が聞こえる。階段を上がり通路をくぐってからまず首を正面、次に右、続いて左…。

 あっ。

 なんだ、満員か。満員? ちょっと待て。まだ2回戦だぞ。それにしてもやけに暑い。無理もない。1万5000人も詰めかけたんだから。ここは温度が違う、と肌が言っている。

 94年まで朝高に吹かなかったノーサイドの笛。あれから10年。君たちは立っている。最激戦地区―大阪を制し、朝高の名を胸に意気揚々と立っている。楕円形のボールを手にした時からの夢の舞台へ。高校ラガーマンの聖地―「花園」へ。

 頼むぞ。先輩たちの分まで走れ。悔しさをぶちまけろ。同胞たちの魂の声援、海を越えた1世の思い、在日を支えてきた全ての人たちの夢…。存分に描いてみせてくれ。

 悩む在日。岐路に立つ在日。いま大切なもの、守るべきものは何なのか。君たちは教えてくれた。どんな困難にも堂々と立ち向かい、そして打ち勝つ姿を同胞は君たちの背に見た。

 全国大会への出場は通過点でしかない。目標はあくまで全国制覇。それが大阪のラグビーだ。夢は終わらない。まだまだ続く。ひるむことなく前へ前へ。あきらめることなく前へ前へ。それが朝高のラグビーだ。

 …。

 悔しい。

 やっぱり悔しい。

 でも下は見ない。胸を張ろう。夢の感触はまだ手の内にある。同胞たちの涙、君たちの涙を花園の芝は絶対に忘れない。(健)

[朝鮮新報 2004.1.13]