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雪よ 早く降っておくれ

 雪よ 早く降っておくれ
 あの荒漠とした野を白く覆っておくれ

 冷たい霜の毒杯に唇は裂け
 無慈悲な風の乱刀に
 血まみれの落葉が積る
 大地の乳房 ポートラップ色の傷たちを

 雪よ 早く降っておくれ
 あの痩せさらばえた山を静かに覆っておくれ

 死骸のような枯れ木の上に
 カラスが鳴く
 錦繍の衣も青春の肉体も奪われ
 寒威にうずくまる黒き顔たちを

 雪よ どんどん降っておくれ
 太陽はふたたびその上に輝くだろう

 悲しい過去の記憶を埋めてしまい
 寒々しい現実を忘れ
 聖域の夜明け 白い浄土の上に
 わが霊を休ませんと願う

「詩苑」2号に収録(1935)

呉一島(オ・イルト、1901―1946) 詩集に「乙亥名詩選集」(1936)。大地を真っ白に染めて降る雪に、悲しくつらい現実をも覆ってほしいという思いがしんしんと伝わってくる。今年も残りわずか。年の瀬に雪よ降れと願うのは訳者だけであろうか。(選訳・康明淑)

[朝鮮新報 2003.12.17]