若きアーティストたち(17) |
ピアニスト・朴令鈴さん 1世の背中を見て育った2世の作曲家が書いた曲を、3世の女性ピアニストが表現した。約40分の大作を弾き終えて朴令鈴(パク・リンリン)さん(30)は、「この曲を弾いてアリランを身近なものに感じることができた」と話した。この日、舞台では、東京朝鮮歌舞団による「朝鮮八道アリラン紀行」も披露され、フィナーレでは、金さんが作詞、作曲した「異国のアリラン」を参加者全員が合唱した。 現在、歌曲の伴奏者として高い評価を受けている朴さんとピアノとの出会いは幼少の頃。小さな胸に「ピアニストになりたい」という憧れを抱きつづけていた少女は、その夢をかなえた。歌曲の伴奏を始めたのは大学4年生のとき。その後大学の研究科に進み、卒業後はさまざまなコンサートを企画し出演。ドイツや日本のオペラの伴奏をして賞を取ったこともある。 「でも、高校生の頃には伸び悩み、自分の進路を決めかねていた時期もあった」。当時通っていたピアノ教室が主催する夏期講習がきっかけとなり、音楽を志す決心をするものの、その後も幾度となく「悩み、迷い、右往左往しながらこの道に収まった」と本音を語る。 フリーのピアニストとして活躍中の朴さんが、在日同胞の前で演奏するのはまれなことだとか。「今回、同胞たちの前でアリランを演奏して、あらためて在日って何だろう? と考えた」。というのも、朴さんの目には「在日同胞の文化公演=金剛山歌劇団もしくは朝鮮歌舞団の公演」としか映っていなかったらしく、「クラシカルな曲にアレンジしたアリランをピアノ独奏で披露する」のが新鮮に感じられたのだという。 朴さんは「日本の音楽界と在日のそれとの間にはまだまだ高い壁があるように感じられる」と考える。「私たちは日本に住んでいる。音楽の世界では在日でも本名で活躍している人は多い」。朴さん自身、「朴令鈴」の名で今でも数々の仕事をこなしている。 「昔と違って、最近では在日同胞もいろんな音楽に親しむ余裕ができてきた。もっといろんな形で公演を企画できたら楽しいのに」 その日、舞台に立った朴さんの衣装は、淡い小花の刺しゅうが散りばめられた白いドレス。「アリランの曲に合わせて、民族の伝統的な衣装をイメージした」。 夢は、「日本人にも、在日にも、他の国のどんな人にも受け入れられるピアニストになる」こと。「これを期に機会があれば同胞たちの前でも演奏してみたい」と話していた。(金潤順記者) [朝鮮新報 2003.11.26] |