おまえと呼んでみる祖国よ おまえは今何処にいるのか ぼろきれ一枚まとい 土幕に横たわっているのか その願い叶うすべもなく 道をさまようのか
今朝もこの地を後にする数知れない布包み 何処かに生きる道を探してさまよう群 その中におまえも紛れて あの峰を越えたのか
おまえと呼んでみる祖国よ 落照よりも淋しい祖国よ 長い夜に聞こえるカヤグムの音のように 胸に染みとおるその名よ 来たる春の日 桃李花のごとく ぱあっと一度咲いておくれ
「鷲山文選」(1958)に収録
李殷相(リ・ウンサン、1903―1982) 時調(わが国固有の詩)詩人。「鷲山時調集」 (1932)など百冊あまりの著書を残している。詩人の、奪われた祖国に対する思いと独立への願いが切なく伝わってくる。(選訳・康明淑)
[朝鮮新報 2003.10.15]