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若きアーティストたち(16)

「ハーヴェスト99」所属美術作家・沈栄華さん

 朝鮮大学校美術科を卒業後、総聯佐賀県本部で専従活動をするかたわら、県内の若手作家たちでつくるグループ「ハーヴェスト99」に所属し美術活動を展開する沈栄華さん(24)。

 ハーヴェスト99のメンバー10人と、南の大邱市の美術グループ「美友」のメンバーら7人が、2月10〜16日に佐賀県牛津町の登録文化財「赤レンガ館」で4回目となる美術交流展を開催した。

 窓から見える青空と真っ赤に染まる夕焼けの水彩画が並ぶ。2枚組みの作品を「ハヌル(空)」と名付けた。

 沈さんはこの作品を交流展に出した。絵に込めた思いは「祖国統一」−。

 沈さんの作品には共通のテーマがある。男と女、海と大陸…。対称をなしながらも、本来は同じ起源を持つものに興味を引かれる。そこに分断された祖国のイメージを重ね合わせる。

 メンバーから出品の誘いを受け、2回目から加わり出品を続けてきた。同展の関連イベントでは、朝鮮語講座の講師や通訳を務めたり、南の作家たちを自宅に招待するなどして交流も深めた。

 「グループの人や南の人たちに在日朝鮮人のことを詳しく知ってもらういい機会」

 沈さんは佐賀県出身。この県の同胞数はわずか1000人で、ウリハッキョはない。対象としている朝青員らは約30人。その中でも「純粋な佐賀出身者は2、3人だけ」。

 現在、他県の朝青たちとの交流、日本や南朝鮮の青年たちとの交流事業を積極的に催す。朝青佐賀では、何十年ぶりかの専従活動家。中学3年の時に参加したサマースクールがきっかけで高校からウリハッキョへ通い始めた。

 「同胞たちが少ないと言っても、若い世代がこの地域をしっかり守っていかないと」。その熱い思いは美術においても変わりはなかった。

 「自分が大学で専攻してきた『美術』にもなんらかの形で携わっていきたかった」と笑顔をみせる。しかし、当初は専従活動と絵の間で苦悩したことも。美術を続ける機会を見いだせず、専従活動もすべて投げ出したい時期もあった。

 「自分の実力、現実を直視して信念と根性があったからここまでやってこれた。サークルの仲間、自分を必要としてくれる南・大邱の人たちにも感謝しています」

 沈さんは、朝大の祖国訪問中に見た「朝鮮画」の虜となった。「自分の中にピタッとくるものがあった」。

 自分の感性に合う絵の「原点」をここで見つけた。朝鮮画を現代風にアレンジしたもの、朝鮮独特のにじみや色調を織り交ぜて絵に表現してみようと挑戦中だ。

 もう一方では、「『ものづくり』という視点で見れば美術には壁はない。1つにこだわらずいろいろ試しています」。

 8月23〜29日には、佐賀生まれで同級生の日本人女性2人と共に、「同格展〜進むための模索」を開き、水彩、油彩、アクリルなどの抽象画約30展を展示した。「同格(トンキョク)」は朝鮮語で同じ資格、格式を意味する。3人が美術を通して人を元気にさせようとの共通の思いを込めてこの名にした。

 このような積極的な交流の姿勢は佐賀新聞にも取り上げられている。

 「自分の作品は美術一般で見るとすでにやりつくされているところがあって、実際に人を魅了する絵や作品を作っているかというとまだまだ恥ずかしい。駆け出しで不安に負けそうになるけれど、しり込みしていたら何もつかめない。自分自身にしか描けないものを必ずつかんでみせます」(金明c記者)

[朝鮮新報 2003.9.24]