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海の風

 海の風が
 わたしは好きだ
 七、八月のはまなす
 風に誘われ

 吹かれてひらひら
 船艙に落ちれば
 櫓を漕ぐ船頭の
 手が止まる

 手を止めたなら
 も一度ごらんよ
 松の木の下で
 見送る新妻を

 海の風が
 わたしは好きだ
 たとえ出て行く船であれ
 も一度見せてくれるのだから

「開闢」(1925)に収録

金東煥(キム・ドンファン、1901―?) 処女詩集「国境の夜」(1924)は、わが国初の叙事詩として当時注目を浴びた。他に「松花江の舟歌」、「北青の水売り」など郷土色の濃い詩を数多く残したが、植民地末期には親日的な詩を書いている。この詩を読むと潮風が恋しくなる。(選訳・康明淑)

[朝鮮新報 2003.8.27]