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若きアーティストたち(15)

グラフィックアーティスト・金成俊さん

 2006年に開かれる兵庫国体のマスコットに、神戸市在住の金成俊さん(32)の作品が選ばれたのは1月のこと。全国から3069点の応募作品が寄せられたなか最優秀賞に輝いた。作品は、震災から復興する兵庫県の姿を象徴した「羽ばたくフェニックス(不死鳥)」をイメージしたもの。金さん自身も震災で自宅が半壊し、避難した経験の持ち主である。

 「物心ついた頃から絵を描くのが好きだった」

 初級部1年から中学3年まで金さんは9年連続、在日本朝鮮学生美術展に入賞している。美術を楽しみにしていた金さんは「潜在的な意識の中に創作をしたいという願望があったのかも」と話す。

 多くの死者を出した阪神・淡路大震災に襲われたとき、神戸市石屋川駅前のマンションにひとり暮らしをしていた金さんは、物凄い揺れと同時に駅のホームが家の前に崩れ落ち、ドアが開かなくなった恐怖を今でも鮮明に覚えている。

 「あのとき、死んだ人をたくさん見た。あちこちで火事が起きて…。そのとき、人生観がかわったような気がする。やりたいことがあれば、やっとけみたいな」

 勤務先だった東神戸初中(当時)も全壊し、生徒をひとり失った。そして、「1年くらい経って創作活動をはじめた。木を掘ったり、アクリル画を描いたり」。地域の朝青支部委員長の要求に応えてサマースクールのチラシや、同胞が営む飲食店のメニューづくりを始めたのもこの頃だった。

 「当時は勉強のつもりだった。1日の睡眠時間は4、5時間程度。教員をしながら、削れる時間は寝る時間だけだったから」

 独学でグラフィック・アートを勉強し、2000年ビクターHP−LA7枚デザインコンテストでユニークデザイン賞受賞。2001年大阪朝鮮歌舞団創団35周年記念公演オープニングビデオとパンフレット表紙を制作、自身の実力を試してみようと数々のコンテストに応募した。

 そして、2002年ピョンコマキャラクターコンテスト優秀賞に選ばれ、他にも東海セキュリティー、大阪ウリ民族フォーラムのパンフレットなどを製作。兵庫国体のマスコット募集に応募したのも「たまたまそこに応募用紙があったから」だと話す。

 外国籍の者が「最優秀賞」に選ばれたことに関して、「兵庫県という県がかなり国際的に開けてる所だから」と率直に語る金さん。国籍を越えて「すべての人がなごんでくれれば良い」とも話す。

 現在、神戸朝高で講師をしながらキャラクター制作、CGビデオ制作を行っている。「今後はフルCGのアニメーションを創ってみたい」。自作のHPではCGアニメ「とっき伝」の製作スタッフを募集中だ(http://homepage3.nifty.com/junbo/)。

 彼が描いた兵庫国体のマスコットは、着ぐるみ、ぬいぐるみ、携帯ストラップなどに姿を変えて多くの人に親しまれている。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2003.7.23]